「バーリング」とは、素材に穴を開け、その穴のフチを円筒状に伸ばす加工のことをいいます。一般的にネジ山を確保するために使われている技術ですが、MONOVATEでは容器の洗浄性を向上させる目的などのためにこれを用いています。
製薬・食品業界など、異物混入(コンタミネーション)防止が特に重視される現場で、錆びにくく衛生的という理由から使用されることの多いステンレス容器。汚れが溜まりにくく、落としやすいといった「洗浄性」は、設備選定の大切なポイントです。
それに効果を発揮するのが、今回ご紹介する「バーリング加工」です。この記事では、当社でのバーリング加工の方法とその目的についてご紹介します。
1. バーリングとは
バーリングとは成形加工方法の一種で、素材に穴をあけ、その穴の縁を円筒状に伸ばす加工のことを指します。平面に立体的な部分を作りだすことがバーリング加工の特徴です。
下の写真では、左の穴が加工前、右の穴が加工後の状態です。
左が加工前 右が加工後
下穴と呼ばれる穴を板材に開けた後、円錐形状の型を通すことによって、穴を広げながら円筒状に伸ばします。一般的には、板金屋さんで薄い板にネジ加工をしたい時にネジ山を確保するために利用されている技術です。
弊社ではこのバーリング加工をステンレス容器に応用しています。
タンクや蓋にノズルを直接溶接せず、バーリングで穴を立ち上げてからノズルを溶接しています。
2.バーリングを活用する理由?
では、なぜ当社ではノズルを直接溶接せずに、バーリングで穴を立ち上げてからノズルを溶接しているのでしょうか。これには以下の2つの理由があります。
バーリングを活用する2つの理由
①洗浄性を高めるため
②母材のひずみを抑えるため
①洗浄性を高めるため
バーリングをすることにより、汚れの溜まらない滑らかな面となります。?
一般的な溶接では付け根に角が生まれ、そこに汚れが溜まりやすくなります。それに対し、バーリング加工は付け根にRが生まれるため汚れが溜まりにくくなるという特長があります。
【溶接】と【バーリング加工+溶接】の違い
【一般的な溶接】:ノズルと母材の付け根に角が生まれる
【バーリング加工+溶接】:ノズルと母材の付け根が曲線を描く
また、単に汚れが溜まりにくいだけではなく、汚れを落としやすいというメリットもあります。ブラシなどを使わなければならない角の汚れなども、バーリング加工を施した部分であれば簡単に汚れを拭き落とせます。腐食防止にも貢献します。
比較実験-汚れの残存にはどれくらい差がある?
①一般的な溶接と②バーリング+溶接とで、ノズルと母材の付け根への汚れの残存にどれだけ違いがあるのかを比較してみました。
付け根に黒い絵の具を付け、それを拭きとってみた結果が以下の画像です。
画像をご覧いただいてわかるように、②バーリング+溶接ではほとんど残存しません。
②ひずみを抑えるため
弊社製品は板厚の薄いものが多く、溶接時には母材にひずみを生じさせる可能性があります。バーリング加工であればひずみを低減できるため、その修正のために余計な傷をつけることもなく、綺麗に仕上げられます。そのための時間・コストも削減できるのもメリットです。
また、バーリング加工にすることで、直角に接合させる隅肉溶接ではなく突合せ溶接にできます。隅肉溶接に比べ熱応力や振動、曲げなどの外力に対する強度が高くなります。
3. 特注加工例の紹介
バーリング加工を利用して製作した特注ステンレス容器をご紹介します。
容器に開けた穴をバーリンク加工し、ねじ込み継手を溶接しています。
4. バーリング加工の様子を動画で見てみよう
どのようにしてバーリング加工を行うのかは、下の動画でご覧いただけます。こちらもあわせてご覧ください。
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