当社の密閉容器には、キャッチクリップ式のCTH型とレバーバンド式のCTL型があります。
いずれも、保管用途などでお使いいただく分には十分な密閉性を有していますが、容器を異常な状態にしたときにどれだけ内容物が漏れるかは未知数です。
今回はこれを確かめるために、二種類の容器を横倒しにして漏水量をチェックしてみました。果たして、どれだけの差があるのでしょうか。
1. キャッチクリップ式とレバーバンド式の違い
当社の密閉容器には、キャッチクリップ式(CTH型)と レバーバンド式(CTL型)の2種類があります。まずは、それぞれについて簡単にご説明しましょう。
1.1. キャッチクリップ式(CTH型)
容器本体に取り付けられたクリップで蓋を固定するタイプです。容器サイズに応じて、片手で締められる3~6個のクリップが取り付けられています。比較的取り扱いが簡単です。
標準仕様(内径470mm以下の容器)の場合、パッキンは容器の本体側に装着します。
1.2. レバーバンド式(CTL型)
蓋をステンレス製のバンドで固定するタイプです。両手で扱う必要があるものの、キャッチクリップ式とは異なり、一回の締め付けで固定できます。
パッキンは蓋側に装着します。
当社における「密閉」とは
「通常の取り扱い時において、すき間のないようにぴったりと閉じた際に外部からの固形物(ホコリ等)の混入を防ぐ程度の密閉」のことです(日本薬局方に準ずる)。
容器を横転させたり、衝撃を与えた場合の液体・粉体の漏れ、気体の漏れを防ぐ完全密閉を目的とした構造ではありません。
2. 【実験】容器を横倒しにしたときの水の漏れ量はどれくらい?
当社の容器は、通常使用時には内容物がこぼれない設計になっていますが、もし容器を横倒しにしたらどうなるのでしょうか。
今回は容器の中に水道水を入れて横倒しにし、3種類の実験でキャッチクリップ式とレバーバンド式の漏れ具合を確認してみました。
ご注意
本実験は簡易的なものであり、製品の性能を示すものではありません。また、科学的検証もおこなっていないため、本実験の再現性は担保しません。参考までにご覧ください。
2.1. 横倒し(5分間)だけならどちらも漏れにくい
まずは容器を静かに横倒しにし、5分間だけ放置しました。使用する容器はCTH-30とCTL-30(ともに20L容器)で、液量は4段階での実験です。
容器を倒す前と5分経過後で全重量を計測し、その差分を確認します。
水の量 | 6L | 10L | 16L | 20L |
クリップ式 (5分経過後の重量) | 6 | 10 | 16 | 20 |
バンド式 (5分経過後の重量) | 6 | 10 | 16 | 20 |
容器重量を差し引いた重量です|単位はkg
上の表のとおり、数値上どちらの容器も液量の変化はありませんでした。目視でも漏れは見受けられません。
2.2. 1週間放置するとレバーバンド式が優位
5分間だけでは漏れなくても、もっと長い時間放置すれば滲み出してくる可能性もあるため、今度は1週間放置して様子を見てみました。今回は満水状態(20L)のみでの実験です。
20Lを1週間放置 | 開始時 | 終了時(7日後) | 差分 |
クリップ式 | 20 | 19.92 | 0.08 |
バンド式 | 20 | 20 | 0 |
容器重量を差し引いた重量です|単位はkg
今回は差が生じました。レバーバンド式に変化がなかったのに対し、キャッチクリップ式では0.08kg、すなわち80ml漏れています。
目視でも確認したところ、横倒しにしてから2時間後にはキャッチクリップ式の下に敷いていた吸水シートが膨らみだしました(=水が漏れた)。一方、レバーバンド式では目視でも漏れは確認できませんでした。
当社の容器は横倒しにして保管されることを想定していません。ですが、万が一容器が横転したまま放置される状況が想定されるのであれば、レバーバンド式のほうが安全です。
2.3. 衝撃を与えると違いはより顕著に
最後に、衝撃を与えた場合の漏れ量を確かめてみました。
今回は簡易的な実験のため、約250mmの高さの台から容器を人の手で3回連続で落下させ、漏れ量を確認しました。水の量は16L(8分目)です。
16Lを3回落下 | 落下前 | 落下後(3回) | 差分 |
クリップ式 | 16 | 14.52 | 1.48 |
バンド式 | 16 | 15.96 | 0.04 |
容器重量を差し引いた重量です|単位はkg
単に横倒しにして放置したときと比べ、漏れ量に大きく差があります。レバーバンド式が40mlの漏れであったのに対し、キャッチクリップ式は約1.5Lの漏れが確認できました。
目視で確認すると、レバーバンド式は落下回数を重ねてもさほど漏れ量は変わらないのに対し、キャッチクリップ式は徐々にクリップの締め付けが弱まり、最終的にはパッキンがはみ出してきてしまいました。このことが、キャッチクリップ式の多量の漏れの原因になったと考えられます。
キャッチクリップ式をお使いの際に、万が一容器を転倒・落下させてしまった場合には、今回の実験のようにキャッチクリップの締め付けが弱まっている可能性があります。再度容器をお使いになる場合には、まず締め付け力に問題がないか確認するのがよいでしょう。
3. 通常使用時における密閉度の差は?
今回の実験では、「容器を誤って倒してしまった」などの異常な状態においては、レバーバンドで全体を締め付けるレバーバンド式のほうが漏れ量が少なく済むことがわかりました。
一方で、通常使用時では密閉度にどれだけの差があるのでしょうか。これを検証するために、容器に無水塩化カルシウムを入れておき、それを一定日数放置し重量を計測する実験をおこなったこともあります。
この様子については、「キャッチクリップとレバーバンド 密閉度を比べてみました」(2019年5月公開)をご覧ください。