HACCPとは、1960年代にアメリカで宇宙食の安全性を確保するために開発された食品衛生管理の方式です。
Hazard
Analysis(危害要因分析)とCritical Control
Point(重要管理点)を組み合わせているので、略称でHACCP(ハサップ・またはハセップ)と呼ばれています。
アメリカやEU諸国などではすでにHACCPの導入が進んでいますが、日本でも食品流通の国際化・2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえて2018年6月、食品衛生法改正の中で、直接食品を扱う業種である食品製造業を対象にHACCPへの対応が義務づけられました。
日本の徹底した衛生管理を国内外に示す必要性からHACCPに対する機運が高まっていますが、HACCP対応のために、結局何をすればいいのでしょうか?
わかりやすく解説します。
1.HACCPによって今までと何が変わるの?認証は義務?
従来の一般衛生管理プログラム(PP:Prerequisite Program)
- 主に完成品の抜き取り検査で安全性を確認
- 不適合品が抜き取り検査で発見できない場合、そのまま出荷されてしまう危険性がある
HACCP
- 全工程で発生しうる問題を予測し、その問題を解決できる工程を管理する
- 重点管理で効率よく全製品への問題対策をする
重点管理により、全製品の安全性を確保するのがHACCPの考え方です。
一般衛生管理プログラムからHACCPに衛生管理方法を完全に切り替えるのではなく、どちらも並行して実施しなければなりません。
またHACCPには、業界団体や地方自治体など様々な機関による認証があります。
海外に製品を輸出する場合を除き認証は義務ではありませんが、すでにHACCPを導入している企業のうち半数近くは上記のような機関による・または取引先による認証を受けているようです。
2.とりあえず、生産設備を全部HACCP対応品にしないと!?
…というわけではありません。HACCPは詳細な方法を定めたり、決まったものを使って取り組むものではないので、必ずしも既存の設備を入れ替える必要はないのです。
HACCPは大まかに
①担当者の決定
②対象製品の製造工程確認
③危害要因の分析
という手順で進めます。
詳細は「HACCP導入のための7原則12手順(公益社団法人日本食品衛生協会)」をご参照ください。
③危害要因の分析 で発見した問題を解決できる工程(=重要管理点)に対してアプローチしていきます。
そのアプローチの方法として、大がかりな設備更新以外にはどんなことがおこなわれているのでしょうか。
低コストで導入できる例を一部ご紹介します。
加熱工程の記録
殺菌の徹底のためにおこなわれます。
加熱工程がある場合ここを重点管理点とし、「○℃で○分」など基準を定めることが多いです。
ゾーニング
交差汚染(クロスコンタミネーション)防止のため、生産エリアを汚染・清潔ゾーンに区分します。
- 動線管理:物の流れが一方通行になるような管理。簡易パーテーションの設置・設備レイアウトの変更など。
- 識別管理:器具や清掃用具を、ラベリングや色別などゾーンごとに区別し使い分ける。
5S
異物混入防止のためにおこないます。清掃自体の仕組みづくりや、清掃しやすい設備の配置をつくります。
- 機械の壁付けをやめるなど、スキマを大きくとり清掃しやすくする。
- 腰をあまりかがめなくても清掃できるよう、床から高さを出す。
はじめから大金をかけるのではなく、まずはちょっとした変更で改善が可能かを考えることが重要です。
3.HACCP対応品って何だろう?
とはいっても、設備や備品を買い替える必要がでてくることもあります。
工場用品を扱っているカタログなどには「HACCP対応品」という表記が付いた製品もありますが、「HACCP対応品」とはどんなものがあるのでしょうか。
一部例をご紹介します。
・識別管理ができる
ゾーン別・生産品目別に使い分けしやすくなっているもの。色別管理用のカラフルな清掃用品など。
・洗浄性(サニタリー性)が高い
「細かいスキマがない」など、汚れが溜まりにくく洗浄しやすいもの。
・使い捨てができる
交差汚染の防止になる。食品に直接触れる手袋など。
・耐久性が高い
落下しても破損しにくいものなど。破片などの異物混入を防止できる。
・混入時に検出できる
金属探知機に反応する材質でできているもの。
「 HACCP対応品」という特別な認証があるわけではなく、「これを使っておけば安心!」という製品でもありません。しっかりと分析をしたうえで、対処すべき問題点に合った製品を選ぶ必要があります。
4.ステンレス容器から取り組むHACCP
食品業界全体でHACCPへの機運が高まる中で樹脂・ガラス製容器からステンレス容器への切り替えが進んでいます。どれも同じような見た目のステンレス容器ですが、どんな点がHACCP対応に適していて、何を基準に選択すればいいのでしょうか。弊社のステンレス容器で実施できるHACCP対応に沿って、特長と選択のポイントをご紹介します。
特長:ガラス・樹脂製容器よりも耐久性に優れた容器
ポイント1:洗浄性(サニタリー性)が高い容器
ポイント2:より安全な識別管理ができる容器
特長:ガラス・樹脂製容器よりも耐久性に優れた容器
- ガラス製容器のように、落下して破損し、異物混入につながる恐れがない
- 樹脂製容器のように、経年劣化によるささくれがない
樹脂製容器を使用している工場では、作業前後の洗浄時に樹脂特有のささくれを除去しているところもあるようです。その作業にかかる時間と、ステンレス容器を購入する費用のどちらのコストを重視するかが切り替えのポイントになりそうですね。
ポイント1:洗浄性(サニタリー性)が高い容器
- 全周溶接や切りっぱなしなど、洗浄しにくいスキマのない容器
- 電解研磨をして、汚れを落としやすい容器
- 容器の底部分にRがつき、汚れが溜まりにくく落としやすい容器(弊社ではすべての容器が底部分R構造になっています。)
容器の洗浄方法や電解研磨についてはこちらのコラムをご覧ください。
ポイント2:より安全な識別管理ができる容器
- ラベルやシールを糊残りなくはがせるシール座付容器
- 「消えない・溜まらない・混入しない」レーザー(電食)マーキング
- 色別管理できる・混入しても発見しやすいカラーパッキン付容器
5.まとめ
食品業界全体としてHACCPへの機運が高まる中で、樹脂製容器からステンレス容器への切り替えが進んでいます。しかし樹脂製容器に比べ高価であること・重量があり作業効率が落ちる恐れがあることから、導入のハードルが高いという事実もあります。
手当たり次第ステンレス容器へ切り替えるのではなく、重点的に管理すべき工程を分析してから、順次切り替えていくのがよさそうですね。
MONOVATEでは、1品からステンレス製品のオーダーメイド製作を承っております。
「樹脂製からの切り替えをしたい」「今使っているものが使いにくい」「ちょうどよいサイズがない」などのお悩み、製作可否などお気軽にご相談ください。