すでに当社のステンレス容器をお使いになっている方ならご経験があるかもしれませんが、稀に容器の蓋が開かなくなることがあります。
その原因としてよくあるのが、容器の内側と外側とでの気圧差。容器内部の温度が蓋を閉めたときよりも冷えると、容器内が減圧状態となり、蓋がどうにも開かなくなります。
以前のコラムでもご紹介した現象ではありますが、今回の記事では気圧差によって蓋が開かなくなった実際の様子とその対処法に着目してご説明します。
1. そもそもなぜ開かなくなるのか
容器の中に液体などを入れ、その後内容物が冷えると蓋が開かなくなります。繰り返しになりますが、これは容器の内側と外側での気圧差によって生じるものです。日常生活で見られる「お椀の蓋が取れなくなる」のと同じ現象が起こっています。
蓋を閉めた状態で容器内部が冷えると、容器内の水蒸気が次第に冷えて水に戻ります。これに加え、空気は冷えると体積が小さくなるという特性によって中の気圧が下がり、容器外の大気圧とのバランスが取れなくなります。
こうして、容器外から相対的に強い力で押されることで、蓋を開けられなくなるという仕組みです。
2. 内容物が冷めたときの蓋の様子
実際に蓋を開けられなくなる現象を再現してみました。
まず、当社のレバーバンド式の容器【CTL】とキャッチクリップ式の容器【CTH】に水を1/7程度入れて沸騰させます。その後、蓋をすぐに閉め、容器の外側から冷水を約10分間かけて冷却します。
こうして容器内部が冷えると、先ほどご説明したとおり蓋が容器外から強い力で押されます。実際に蓋を見てみると、通常時よりも容器の中央部分がへこんでいるのがおわかりいただけるでしょう。
※蓋の中央部に直尺を置き、へこみ具合を確認しています。
これぐらいの圧力がかかると、力強く引っ張ったりしても蓋が開きません。そもそも、内容物がこぼれる可能性もあるので、あまり力づくで開けるのも好ましくありませんよね。
3. 開かなくなった蓋を開ける方法
では、この蓋を開けるにはどうすればよいのでしょうか。各蓋形状でご説明します。
CTL(レバーバンド式)の場合
レバーバンド式であれば、マイクロスパチュラ(ヘラ)をパッキンと本体の間に挿しこみ、空気を容器内に入れることで蓋を開けられます。
お椀の蓋を開けるときと同じで、容器内に空気を入れて内部の気圧と外部の気圧とを等しくできれば蓋が開きます。詳しくは後述しますが、CTHとは異なり、スパチュラさえあれば比較的簡単に開けられます。
ちなみに、容器を開けた際の内容物(水)の温度は33.6℃でした。
CTH(キャッチクリップ式)の場合
キャッチクリップ式の場合、その形状からスパチュラで開けることは困難です。無理に挿しこもうとするとパッキンや蓋を傷つけ、スパチュラ自体を破損するおそれもあります。
CTHの蓋を開けたい場合には容器を加熱し、容器内の気圧を元に戻します。温めたタオルで包んだり湯煎したりする方法もありますが、今回は直火で温めてみます。
ご注意
・容器を加熱する際には空焚きを防ぐため、容器を振るなどして内容物があるかどうかを必ずご確認ください。
・加圧状態にならないよう、加熱時にはクリップやバンドは必ず外してください。
・弊社の容器は主に貯蔵での使用を想定し薄板で製作しているため、直火での加熱による変形・変色は保証対象外です。
今回の実験では沸騰後すぐに蓋を閉めたので、その程度の温度になるまでしばらく待ちます。温めはじめのときはびくともしなかった蓋ですが、中からコトコト音が聞こえてくると蓋がすんなり開きました。減圧状態では沸点が下がりますので、86.6℃の時点で蓋が開きました。
容器を再加熱したくない場合
「再加熱をすると内容物に影響がある」、「いちいち再加熱するのは面倒」という場合、容器の蓋に外気導入用のバルブを取り付けるのもおすすめです。
蓋を開けたいときには、バルブを開けて減圧状態を解消します。このほか、エアー抜き穴を設けて、ゴム栓をしておくという方法もあります。
4. まとめ
もし既存の容器が開かずにお困りの場合には、下記の方法をお試しください。
- CTL(レバーバンド式):ヘラのようなものを挿しこんで空気を入れる
- CTH(キャッチクリップ式):蓋を閉めたときの温度くらいまで加熱して気圧を戻す
もしこれから容器をご所望の場合には、蓋にバルブ・エアー抜き穴などを設ければ簡単に蓋を開けられます。また、先ほどご紹介したマイクロスパチュラもご用意できます。
温かい内容物を入れる可能性がある場合には、こうした対処法をご検討ください。