技術コラム

ステンレス製密閉容器の選びかた
2020/12/06 09:00

ステンレス製密閉容器の選びかた

「湿気や乾燥をなるべく抑えたい」「運搬の際に中身が飛散しないようにしたい」などの場合には、密閉できる容器を選ぶと思います。

とは言っても容器には様々な種類やメーカーがあるため、何を買ったらいいのか迷ってしまいませんか?

ステンレス容器メーカーであるMONOVATEでも、大きく分けて2種類の密閉容器があります。

そこから用途に応じて様々な仕様に分かれていきますので、単純に「密閉容器が欲しい」だけでは選びきれないラインナップになっています。

このコラムでは、ご希望に合う「密閉容器の選びかた」について簡単にご紹介します。

このコラムに出てくる密閉容器

今回は以下の2種類の密閉容器のうち、容量が100L以下(内径470mm以下)の製品について、重視するポイントに応じてどちらのタイプがよりおすすめかをご紹介します。

クリップ式の密閉容器

キャッチクリップ式密閉容器
代表製品(CTH)を見る

クリップ式の密閉容器では、キャッチクリップ(パチン錠)付きの容器パッキンを使用します。

容器もしくは蓋にパッキンを取り付け、キャッチクリップで蓋を固定することで簡易密閉できます。家庭用品などでも採用されている密閉方法です。

MONOVATE製品では、型式にCTHと入っている製品が該当します。※容器サイズにより付属品の仕様は異なります。

バンド式の密閉容器

レバーバンド式密閉容器
代表製品(CTL)を見る

バンド式の密閉容器では、容器レバーバンドパッキンを使用します。

蓋にパッキンを取り付け、レバーバンドで蓋を固定することで簡易密閉できます。ペール缶やドラム缶などでも採用されている密閉方法です。

MONOVATE製品では、型式にCTLと入っている製品が該当します。※容器サイズにより付属品の仕様は異なります。

良い密閉容器の条件とは?

以下の3つの条件を満たす密閉容器がおすすめです。

  • ・容器と蓋の間にシリコンパッキンなどのゴムパッキンが付属している※1
  • ・蓋をしっかり閉められる
  • ・パッキンや蓋が破損しても、その部品のみ購入し交換して使える※2

しっかり密閉でき、パッキンなどの消耗品の買い替えもできるものであれば、長くお使いいただけます。MONOVATEの2種類の密閉容器は、どちらもこの3つの条件を満たしています。

※1 内容物との相性も大切です。この薬品ってどうやって保管できるの?~薬品に最適なパッキン~
※2 パッキンの定期的な交換をおすすめしています。いつ取り換える?ステンレス容器用パッキンの交換目安とは

密閉容器のどのような機能を重視しますか?

「密閉容器だから密閉度重視!」「なるべく安価なものが欲しい!」など、お客さまによって重視するポイントは異なると思いますので、さまざまな角度からおすすめの密閉方式をご紹介します。

密閉度 作業性 洗浄性 導入コスト 長く使えるか パッキンの耐薬品性 誤開封の対策 内容物が冷えたときの開けやすさ

結果のみ見たい方はこちら

密閉度を重視するときは

密閉容器で一番気になる方が多いと思われるのが「しっかり密閉できるのか」という点です。

密閉容器の密閉度は製品によって異なりますが、一般的には簡易密閉構造という「運搬の際に中身が飛散しない」「保管の際にホコリが侵入しない」ような密閉度のものとなります。

バンド式がおすすめ

レバーバンド式密閉容器

当社の密閉容器においては、クリップ式よりもバンド式の方が密閉性に優れているという結果が出ています。
キャッチクリップとレバーバンド 密閉度を比べてみました

ステンレス容器でより高い密閉性をお求めの場合は、圧力容器などの気密性の高い容器をご提案いたします。

密閉容器の密閉度に関しては、【実験】密閉容器を倒したときの水の漏れ量はどれくらい?もあわせてご覧ください。

作業性を重視するときは

密閉するための部品の使いやすさなど、密閉がスムーズにおこなえるかどうかが、作業性を左右するポイントになります。

クリップ式がおすすめ

クリップ式とバンド式の作業性の比較

クリップ式は、バンド式に比べて蓋やパッキンの装着が簡単で、クリップのフックを蓋にかけるだけで簡単に密閉できます。※容量100L以下(内径470mm以下)の場合。100L以上は蓋にパッキンを取り付ける仕様となります。

蓋を開けた際も、バンド式の場合はパッキン付きの蓋とバンドの2種類を置くスペースが必要ですが、クリップ式の場合は蓋だけなので省スペースです。

ただし容器を壁際に設置するような場合は、クリップ式だと壁とクリップが干渉して開閉に支障が出ますので、バンド式もご検討ください。

洗浄性を重視するときは

付属する部品の洗いやすさなど、洗浄作業がスムーズにおこなえるかどうかがポイントになります。

バンド式がおすすめ

クリップ式とバンド式の容器側の部品のちがい

バンド式はクリップ式に比べて容器に付いている部品数が少ないため、容器の洗浄作業性に優れています。

洗浄性を重視したサニタリータイプのバンド式密閉容器は、衛生管理の厳しい製薬メーカーさまに長年採用されています。

導入コストを重視するときは

製品の価格は、購入の際の比較検討のポイントになります。

クリップ式がおすすめ

キャッチクリップ式密閉容器

導入コストはクリップ式 < バンド式となります。

どちらの密閉方式でもよろしければ、クリップ式がおすすめです。

長く使えるかを重視するときは

密閉容器を長くお使いいただくには、パーツが破損した場合にその部分だけ交換できるかがポイントになります。

バンド式がおすすめ

クリップ式はクリップが取り外しできない

クリップ式のクリップはお客さま自身での交換ができない仕様となっており、破損した場合は本体ごと買い替えいただくことがほとんどです。

バンド式のバンド(レバーバンド)は、単品購入が可能です。バンドが破損した場合にバンドだけの交換で済むため、長く使いたい場合にはおすすめです。

蓋とパッキンについては、クリップ式・バンド式どちらの場合でも単品購入・交換が可能です。消耗品の型番については容器サイズから消耗品の型式をさがすをご覧ください。

耐薬品性を重視するときは

密閉容器で薬品を扱いたい場合は、相性の良いパッキンを選定できるかがポイントになります。

クリップ式がおすすめ

キャッチクリップ式密閉容器

ゴム製パッキンと相性の悪い溶剤や薬品を入れて使用したいときには、PTFE(フッ素樹脂)製のパッキンが選択できるクリップ式となります。

ただしPTFEパッキンは樹脂製のため、ゴム製パッキンに比べると密閉度は劣ります。

バンド式は構造上、PTFEパッキンが使用できません。

PTFE製以外(フッ素ゴム、クロロプレンゴム、NBR、EPDM)のパッキンであれば、クリップ式・バンド式どちらの密閉容器でも対応可能です。

容器自体の耐薬品性の向上については、材質変更(SUS304→SUS316L)や、フッ素樹脂コーティングなどのご提案が可能です。

「どの素材のパッキンを使うべきか知りたい」という方はこの薬品ってどうやって保管できるの?~薬品に最適なパッキン~をご覧ください。

誤開封の対策をしたいときは

クリップやバンドは、運搬時などに接触してしまったり引っかかってしまうと開いてしまうことがあります。

誤開封を防ぎたい場合、対策の手段があるかどうかがポイントになります。

バンド式がおすすめ

レバーバンドのフックの詳細

バンド式の場合、100L以下のサイズであればレバーバンドに誤開封防止のフックが標準で付いています。また、フックにある穴を利用して施錠機能を付加することもできます。

クリップ式の場合は特注対応になるためコストがかかります。特注事例はこちら

内容物が冷えたときの開けやすさを重視するときは

密閉時点での温度より開封時の温度が低いと、内部が減圧状態となり開封が困難になることがあります。

バンド式・クリップ式どちらの場合でも、密閉時の温度に戻すことができれば開封しやすくなりますが、温度を戻せない場合は別の対処法があるかがポイントになります。

バンド式がおすすめ

形状イメージ
クリップ式とバンド式の断面図比較
※容量100L以下(内径470mm以下)の場合。100L以上は仕様が異なります。

バンド式の場合、100L以下のサイズであれば外側から容器とパッキンの境が見えるため、その間にヘラなどを差し込むことでさらに開封しやすくできる可能性があります。

詳しくは蓋が開かない!ステンレス容器の蓋が開かないときの対処法をご覧ください。

まとめ|最適なのはクリップ式?バンド式?

クリップ式(CTH)とバンド式(CTL)の機能比較一覧
クリップ式(CTH) バンド式(CTL)
密閉度
作業性
洗浄性
導入コスト
長く使えるか
パッキンの耐薬品性 △(PTFE製×)
誤開封の対策
内容物が冷えたときの開けやすさ

◎:特におすすめ ○:おすすめ △:適していない

お客さまに合わせたご提案ができます

MONOVATEの密閉容器は、お客さまのお悩みや課題を少しでも多く解決できるように、様々な仕様の製品をラインナップしています。

オーダーメイドでの製作実績も豊富ですので、内容物や使用用途だけでなく、お客さまの「重視すること」を第一に考えて容器の仕様を決定・製作することができます。

ここでは、お客さまとの容器選定のお打ち合わせ時にあった実際の事例をご紹介します。

選定例:お客さまの希望を重視し、クリップ式を採用

ジャケットタンクのクリップ式はジャケット槽の範囲が狭くなるというデメリットがあるため、当社では開放型の容器またはバンド式をご提案いたしますが、お客さまのご希望によりクリップ式でのオーダーメイド製作となりました。

お客さまのご希望は、

  • ・作業性を重視(バンド式よりもクリップ式の方が蓋の開閉をおこないやすい。)
  • ・パッキンの耐溶剤性を重視(PTFEパッキンはバンド式にはご用意が無いため)

ということでしたので、この場合にはクリップ式が最適な選択になります。

このように当社では、お客さまのご希望や実際に作業される方の作業性を考慮した製品を製作することができます。

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「この製品とこの製品の違いはなに?」「この製品が良いと思ったけど、もっと良い製品はある?」などの疑問・質問がございましたら、お気軽にご連絡ください。

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