近年、医薬品工場や化粧品工場などの製造現場で、ファクトリーオートメーション(FA)による自動化・ロボット化の導入が急速に進んでいます。
これに伴い、MONOVATEでも「自動化設備に適したステンレス容器を導入したい」というご相談や、装置に組み込むためのオーダーメイド容器の製作依頼が増加しています。
ステンレス容器を装置の仕様や作業工程に合わせてカスタマイズすることで、自動化ラインとの親和性が高まり、生産効率や品質の向上にもつながります。
本コラムでは、自動化された生産工程に適したステンレス容器のカスタマイズ事例や、FA対応製品のポイントをご紹介します。なお、「自動化はまだ予定していないが、人手を減らして省力化・省人化を図りたい」という方は、手作業を減らそう!省力化で作業効率を上げるステンレス製品をご覧ください。
目次
自動化ラインで使いやすいステンレス容器とは?扱いやすさを高める工夫
自動化ラインでステンレス容器をスムーズに活用するためには、装置や作業動作に合わせたサイズ設計や形状の工夫が欠かせません。
ここでは、自動化ラインでの作業効率を高める「扱いやすいステンレス容器」の工夫についてご紹介します。
サイズを合わせる
ワーク許容サイズ、保管スペース、投入量などに合わせたサイズでステンレス容器を設計・製作します。
当社では主に、高さ寸法のカスタマイズで対応しています。【オプション加工】高さ変更
容器内径もカスタマイズできますが、基本的には以下のサイズから選ぶようになります。金型製作など費用面を了承いただければ、オリジナル径での製作も可能です。特注径のステンレス容器【採用事例】
当社標準ラインナップの内径(mm)
180/210/240/270/300/330/360/387/430/470/565/635/770/1000
※容器の仕様により、製作可能なサイズが限られていることがあります。また、上記サイズ以外でも対応可能な場合があります。
干渉しないようにする
例えば容器に付いている取っ手が干渉するときは、取り付け位置をカスタマイズできます。
取っ手自体が不要であれば、「取っ手なし」の選択もできます。
持ちやすくする・つかみやすくする
自動化設備でのハンドリング効率を高めるには、ロボットアームやリフターの動作に合わせた「持ちやすさ」「つかみやすさ」のカスタマイズが重要です。
持ち上げる動作があるとき
「容器を持ち上げて別のパレットに置く」ハンドリング動作があるなら、容器側面にブラケットを取り付けるカスタマイズがおすすめです。【オプション加工】ブラケット
通常の容器にある取っ手は人の手で扱う前提の設計であり、ロボットやリフターなどでの使用は想定されていません。詳しくはこちら
装置で容器を持ち上げる場合には、専用のブラケットをご提案いたします。ブラケットはロボットの仕様に合わせて設計できるため、しっかり持つことができます。干渉などの問題がなければ、人が扱うための取っ手とロボット用のブラケットを両方取り付けることもできます。
つかむ動作があるとき
「つかんで反転させる」ハンドリング動作があるなら、容器側面にリブを加工するカスタマイズがおすすめです。
リブの幅や位置はつかむ側のアームやツメの幅に合わせて加工することで、ズレにくくなりしっかりつかむことができます。リブは容器側面の強度を上げる効果もあります。【オプション加工】リブ加工
容器外面にジャケット等を取り付けて、ロボットハンドのチャックなどとサイズを合わせるカスタマイズもできます。


安定性を向上させる
内容物が重いと容器の底が外側へ膨らんでしまい、容器を置くときやコンベアーなどで運搬するときに容器が揺れて不安定になることがあります。
このような場合には、底のカスタマイズがおすすめです。例えば容器下部に袴を付けると、底がコンベアーなどに触れなくなり安定性が向上します。【オプション加工】袴(ハカマ/スカート)


底の径に合わせた厚板を底外面に取り付け、底を補強するカスタマイズもできます。底が変形しにくくなり安定性が向上します。【オプション加工】 補強板
補強板を使わず容器自体の板厚を上げて対策することもできます。【オプション加工】板厚変更


底にエンボス(凹凸)を加工して底の強度を上げるカスタマイズもできます。底の強度が増して膨らみを抑えられるほか、膨らみやすい底の中央部がコンベアーなどに触れなくなり、安定性が向上します。
蓋が簡単に開くようにする
自動化ラインでの蓋の開閉をスムーズにおこなうには、ロボットが対応しやすい蓋構造を選ぶことが省力化・作業効率化の鍵となります。
蓋を持ち上げるだけで開く
蓋の開閉がしやすい仕様だと自動化しやすくなります。密閉容器などの蓋を固定する部品があるものではなく、かぶせ蓋タイプの容器をベースにしたカスタマイズがおすすめです。
当社のストック蓋【SF】やヒラ蓋【HF】などのかぶせ蓋は、ロボットに合わせた持ち手やブラケットを取り付けるカスタマイズができます。


キャップを回すだけで開く
回転する(ひねる)動作が可能であれば、ねじ口(スクリューキャップ)の容器がおすすめです。
ねじ口は主に小容量のボトルで使われています。かぶせ蓋と比べると密閉性もあります。
ねじ口の製品例を見る


自動化設備に対応したステンレス容器の洗浄性を高めるポイント
自動化された製造ラインでは、洗浄の効率化や異物混入リスクの低減が求められるため、ステンレス容器の内外面における洗浄性の確保が非常に重要です。
ここでは、洗浄性を向上させるステンレス容器の設計ポイントについてご紹介します。
容器内面の洗浄性を向上させる
直接内容物に触れる容器内面は、汚れが付きにくくなる電解研磨の施工がおすすめです。
容器内面を電解研磨することで、表面の残留物を落として表面が滑らかになり、汚れが付きにくくなります。
粘性の強い液体を扱う場合は、フッ素樹脂コーティングの施工がおすすめです。ほとんどの物質が固着しない非粘着性、水や油を弾く撥水性などの特長があり、汚れをすぐに落とすことができます。
容器外面の洗浄性を向上させる
容器外面は部品が多く、洗い上がりにムラが生じやすい箇所です。汚れや洗浄液が残留しやすい部分は、洗浄性を考慮したカスタマイズがおすすめです。
サニタリー仕様
当社ではサニタリー仕様という、洗浄性に優れた仕様をご提案できます。
サニタリー仕様の製品を見る
例えば容器の端の縁巻き部分は、隙間を完全に塞ぐカールシールというカスタマイズがおすすめです。製品によっては縁巻き自体を無くすこともできます。
取っ手は、取り付け部分を全て溶接できる丸棒取っ手(サニタリー式)がおすすめです。
洗浄性を考えた加工方法
当社では、容器に継手などを取り付ける加工の際にも、洗浄性を考えた加工を採用しております。
洗浄性と強度が上がる!?一石二鳥な加工方法「バーリング」ってなに?
ステンレス容器の最適な洗浄方法とは?
ステンレス容器の洗浄方法について知りたい方は、ステンレス容器を長持ちさせる洗浄方法とは?もあわせてご覧ください。
自動化現場での容器管理を効率化するための工夫と選び方
製造現場の自動化が進む中で、容器の識別・履歴管理の効率化はトレーサビリティや品質管理の精度を高める重要な要素となっています。
ここでは、識別管理に強いステンレス容器の工夫と選び方についてご紹介します。
レーザーマーキングを追加する
洗っても消えず、剥がれるものもない印字方法で、改ざん防止にもなる
レーザーマーキングがおすすめです。
オリジナルの管理番号やQRコードなどを容器側面や蓋に印字できます。
シール座を追加する
バーコードラベルなどで管理しラベルの貼り替えがある場合は、ラベルが剥がしやすいシール座の追加がおすすめです。
シール座付きの製品例を見る
カードホルダーを追加する
紙で管理している場合は、水濡れや汚れを防ぐカードホルダーの追加がおすすめです。
カードホルダー付きの製品例を見る
RFIDを取り付ける
RFIDで管理している場合は、容器にRFタグを取り付けて管理できます。RFタグの取り付け方法に合わせて容器をカスタマイズできます。