撹拌機の選定は、製造プロセスの効率化や製品品質の向上に直結する重要な要素です。
内容物の特性や製造条件に適した撹拌機を選ぶことで、混合効率の最適化や生産性の向上が期待できます。
本コラムでは、撹拌機の違いや最適な撹拌機を選定するための3つのポイントを解説し、製造現場での課題解決に役立つ情報を提供します。
撹拌機とは
撹拌機（攪拌機/かくはん機）とは、流体や流体と粉体、スラリーなどの混ぜ合わせに使用する撹拌機器のことです。
撹拌機の先につけた撹拌体（撹拌翼/撹拌羽根/撹拌子）を回転させることで、ステンレス容器などに入れた複数の流体や流体と粉体を均一に溶け合わせます。
そのほかにも、撹拌は流体内の固体の沈降防止や化学反応の促進など様々な目的でおこなわれており、その用途や内容物ごとに適した撹拌機があります。
撹拌機の構造とは
撹拌機は大きくわけて4つの部分から構成されており、撹拌機によってその仕様は異なります。
- モータ：撹拌機の駆動を司る部分
- 取付部：撹拌機をタンクなどへ取り付ける部分
- シャフト：モータと撹拌体をつなぐ軸の部分
- 撹拌体：内容物を混ぜる部分
撹拌と混合の違いとは
混ぜ合わせ溶かし込むものによって呼び方が変わります。一般的には、流体と流体、流体と粉体などの場合は撹拌、粉体や固体などの場合は混合と呼んでいます。このページでは「撹拌」に統一して表記しています。
混合する場合には、容器回転型の混合機ロータリードラムミキサー【RODM】が便利です。
撹拌機選定に役立つ3つのポイント
撹拌機を選定する際にはまず、容器・内容物・目的の3つのポイントに着目します。
この3つを把握したのち、駆動方式・取り付け方法・撹拌体を決定し、撹拌機を選定します。
1.容器・・・どのような容器で撹拌するのか？
容器（タンク）の仕様に合った撹拌機を選定します。
- ・撹拌容器の形状（汎用容器/密閉容器/加圧容器）
- ・取り付ける箇所（クランプ/ヘルール/フランジ等）
- ・サイズ（内径や内高）
2.内容物・・・撹拌したいものはなにか？
撹拌するものの性質に合った性能の撹拌機を選定します。
- ・内容物の粘度や比重
- ・撹拌する量（L）
3.目的・・・どういう撹拌をしたいのか？
- ・「液＋液」「液＋粉体」「スラリー」など
- ・均一な混合/沈降防止/希釈/反応など
- ・高い衛生管理が必要か
撹拌機選定のコツについては、撹拌機を買いたい！と思ったら読む「撹拌機の購入を失敗しないコツ」でも詳しくご紹介しています。
駆動方式から撹拌機を選ぶ
撹拌機には主に以下の3つの駆動方式があり、使用環境や撹拌の目的によって選定します。
電気モータ式
電気モータ式撹拌機は、電気で作動する撹拌機です。研究室から生産設備まで、幅広い分野で使用されている一般的な駆動方式です。
電源は100Vと200Vがあり、100Vはコンセントで手軽に使用できます。インバーターを取り付ければ回転数を変えることもできます。
撹拌目的や使用環境により、電源やモータの容量など様々な撹拌機があります。
エアーモータ式
エアーモータ式撹拌機は、圧縮エアーで作動する撹拌機です。電気モータ式に比べ、小型・軽量でパワーがあります。
モータの回転時にスパーク（火花）が発生しないため、防爆環境での使用や機器の防爆構造が求められる場合に使用します。
供給エアーの圧力やスピードコントローラーを調整することにより回転数やトルクを制御します。
エアー配管またはコンプレッサーが必要となります。
電気モーターとエアーモーターの違いについては、撹拌機の電気モータとエアーモータってどう違うの？で詳しくご紹介しています。
マグネット式
マグネット式撹拌機は、強力なマグネット継手で撹拌体を回転させる撹拌機です。
貫通軸がないため、容器を密閉した状態での撹拌も可能で、軸シール部からのコンタミ防止や容器内の洗浄が容易です。
サニタリー性やクリーン度が求められる場合に使用します。
モータ部と撹拌部が分離できるため、撹拌翼を取り付けしたまま洗浄できます。
取り付け方法から撹拌機を選ぶ
撹拌機の取付方法には主に以下の3つのタイプがあり、撹拌したい内容物や容器の形状に合わせて撹拌機の取付方法を選びます。
可搬型・・・取り外しが簡単なポータブルタイプ
可搬型（かはんがた）撹拌機とは、容器や台座にクランプを締めて取り付ける撹拌機です。非密閉（開放）のステンレスタンクでの撹拌に適しています。
持ち運び・取り付け・取り外しが簡単で、1台の撹拌機を複数の容器で使うこともできます。また、撹拌状態に合わせて撹拌体の位置を調整できます。
MONOVATEでは、可搬型撹拌機が設置できるカクハン機座付きのステンレス容器（撹拌タンク）をご提案できます。
可搬型撹拌機を見る 可搬型撹拌機が設置できる製品を見る
可搬型撹拌機の専用架台や専用リフターもご提案できます
可搬型撹拌機は容器に直接取り付ける以外にも、容器の仕様や用途に合わせて様々な使い方ができます。例えば撹拌機が大型で重い場合は、専用のリフターや昇降機能を採用することで簡単に昇降させることができます。
竪型・・・容器の蓋に取り付ける固定タイプ
竪型（たてがた/縦型/立型）撹拌機とは、容器の蓋に取り付ける撹拌機です。容器と撹拌機の接続部を密閉できるので、密閉容器や圧力容器での撹拌に適しています。
簡単に着脱可能なへルール接続から、大型の撹拌タンクや撹拌機などで使用されるフランジ接続など、用途に応じて選定します。
MONOVATEでは、圧力容器と竪型撹拌機を組み合わせた撹拌タンクなどの製品をご提案できます。
竪型撹拌機を見る 竪型撹拌機付きの製品例を見る
下部型・・・沈降防止タイプ
下部型（かぶがた）撹拌機とは、容器底外面に駆動部を持ち、容器下部から撹拌する撹拌機です。少ない液量のときにも撹拌したい場合や、蓋に撹拌機が取り付けできない場合に適しています。沈降しやすい内容物を強制的に巻き上げられるため、沈殿や沈降の対策にも効果的です。
マグネット式の撹拌機の場合は軸シール部が無いので、容器を密閉（シール）させたままで撹拌ができます。また撹拌体を簡単に外せるので、洗浄に手間がかかりません。
MONOVATEでは、下部撹拌機と撹拌タンクを組み合わせたご提案が可能です。
下部型撹拌機を見る 下部撹拌の製品を見る
密閉したまま撹拌できる竪型撹拌機
下部型は容器を密閉したまま撹拌できるのが特長ですが、竪型でも密閉状態で撹拌できるものがあります。
MONOVATEオリジナルの撹拌機であるベルヌーイ流撹拌機(NTMシリーズ)は容器を密閉したまま撹拌できるとともに、軸シール部から生じた摩耗粉を受け止めるゴミ受けを搭載しているなど、サニタリー性に優れています。
撹拌体を選ぶ
撹拌するものの粘度や撹拌の速度などに応じて、撹拌体（撹拌翼/撹拌羽根/撹拌子）の形状を選びます。ここでは以下の5種類の撹拌体をご紹介します。
- ・パドルタイプ：放射流
- ・プロペラタイプ：強力な軸流と循環流
- ・2段取付タイプ：撹拌効率アップ
- ・アンカータイプ（錨型）：高粘度に対応
- ・ベルヌーイ流撹拌体 BEAG E型：遠心力を利用
- ・特殊形状（その他）：特殊な内容物に対応
パドルタイプ・・・放射流
プロペラタイプ・・・強力な軸流と循環流
形状：撹拌翼が3枚。撹拌翼の中で最も汎用性が高く、一般的に使用されている撹拌翼です。
目的：主に液体の撹拌時に中速で使用されます。
動作：強力な軸流（下への流れ）と循環流が特徴です。
2段取付タイプ・・・撹拌効率アップ
小さな力で撹拌効率を上げるためには、翼の大きさを変えずに翼を複数段にします。
形状：パドルタイプやプロペラタイプなどの撹拌翼を軸に2つ以上取り付けしたものです。
目的：大量に撹拌するときや、混ざりにくい内容物の撹拌時に使用します。
動作：パドルタイプやプロペラタイプと同様です。
アンカータイプ（錨型）・・・高粘度に対応
形状：イカリ(錨)のような形（U字形状）をしています。
目的：容器壁面まで撹拌ができ、高粘度や高濃度の内容物の撹拌に適しています。中～低速で使用されます。
動作：容器壁面に残る内容物も強制的に動かします。
ベルヌーイ流撹拌体 BEAG E型・・・遠心力を利用
形状：撹拌翼やパドルがない撹拌体です。
目的：空気を巻き込みにくく、ボルテックスや泡の発生を抑制します。
動作：遠心力により上昇流と下降流を発生させて水平に吐出し、様々な角度の液流が生まれ均一な撹拌を実現します。
特殊形状・・・特殊な内容物に対応
特殊な内容物の撹拌の際に選定します。
形状：H型パドル・タービン・コーン・スクリュー・リボンなど。
目的：固体の溶解、高スラリーの分散・撹拌など特殊な内容物・用途に使われます。
動作：低速～高速・乱流・上下流・せん断流など、内容物に応じて決定します。
最適な撹拌機をご提案いたします
MONOVATEでは、撹拌機とステンレス容器を組み合わせた製品の製作実績があります。撹拌や調合工程に欠かせない撹拌設備のご提案が可能です。
製品例：ベルヌーイ流撹拌機付 ヒーターユニット
オーダーメイド実績が豊富です
用途や条件、ご要望等に最適な組み合わせの撹拌装置を1品からオーダーメイドで設計・製作いたします。
今までの実績の中から一部をWEBサイト上で公開しておりますので、ぜひご覧ください。
気軽にお問い合わせください
MONOVATEでは、ステンレス容器の製作だけでなく撹拌機の選定も同時におこない、「撹拌ユニット」として医薬・化粧品・化学・食品など様々な分野の工場・研究室に多数納入しています。
「どの撹拌機が一番適しているのかわからない」「最適な撹拌設備を提案してほしい」など、気軽にお問い合わせください！
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