溶解工程や製造工程で起こりやすい問題の一つに、沈殿や沈降の問題があります。
液体に溶けない(溶けにくい)固形物を含む液体を扱うお客さまや、分散しにくい(分離しやすい)内容物を扱うお客さまには、対策が必須の問題ではないでしょうか?
沈殿や沈降の問題が起こりやすいものや工程の例
- 樹脂の溶解工程
- 調味液や飲料の製造工程
- 塗料などの塗布液
- スラリーやコロイド溶液
沈殿や沈降に関してよく聞かれること
- 比重差がありすぐに沈殿してしまう
- 沈殿すると濃度に偏りが出てしまい、品質が安定しない
- 沈殿したら、都度ハンドミキサーで混ぜている
- 沈殿するため、常時撹拌しなければいけない
- 沈殿物の対応に多くの労力と時間が取られてしまう
このコラムでは、液-粉撹拌の混合溶解で起こる沈殿や沈降の問題に適した撹拌機と撹拌装置を選ぶポイントをご紹介します。
装置選定時に参考にしていただければ幸いです。
※沈殿は沈んでしまった粉(沈殿物)のことで、沈降は粉が沈んでいく現象のことを表します。
※当社は2024年4月に日東金属工業株式会社からMONOVATE株式会社へ社名変更しました。動画などのコンテンツ内で旧社名が表示されることがありますがご了承ください。
沈殿や沈降に強い撹拌機とは?
沈殿物を吸い上げる液流を生み出す撹拌機
上昇流を生み出す撹拌機は、底部に溜まる沈殿物を吸い上げて分散することができます。
0:36以降に、撹拌の比較部分があります
製品例:ステンレス電気モーター撹拌機(ベルヌーイ流撹拌体BEAG E型)
沈殿物を下から巻き上げる液流を生み出す撹拌機
タンクの底部に設置する下部型の撹拌機は、沈む粉を強制的に巻き上げることができるため、沈降しやすい内容物の撹拌に効果的です。
タンクと撹拌機が1台にまとまった撹拌装置がおすすめ
タンクと撹拌機を別々に購入すると取り合いが悪かったり、撹拌機のスペックが不足していた…という問題が起こりやすくなります。また、タンクと撹拌機が1台にまとまっていればコンパクトで移動もしやすく、手作業で混ぜたり撹拌機を持つ必要もないので作業者負担も減らせます。
撹拌装置は内容物の性質や作業方法に合わせて細かなカスタマイズをおこなえることも多く、沈殿や沈降の問題を解決しやすくなります。
沈殿や沈降に強い撹拌装置とは?
タンク内部に沈殿物が入り込む場所がない
液を排出する配管部分は特に沈殿物が溜まりやすい部分です。タンク底部に排出口があるタンクは、沈殿物が入り込まないかチェックします。例えば下図左は配管部に沈殿しやすいため、下図中央や右のタイプがおすすめです。
製品例:ベルヌーイ流撹拌ユニット DTM型
温度調整できる
温度で混ざりにくさが変化する場合は、混ざりやすい温度を維持できる機能が付いている撹拌装置をおすすめします。
例えば、粘度のある液体であれば加温すると粘度が下がるため、ヒーター内蔵の撹拌装置がおすすめです。
製品例:ベルヌーイ流撹拌機付 ヒーターユニット
設置場所に温水や冷水、スチーム配管などがあれば、それらを利用できるジャケット付きのタンクがおすすめです。
製品例:ベルヌーイ流撹拌温調ユニット DTM-J型
少ない液量のときでも撹拌できる
下部撹拌機付きの撹拌装置なら、調合の初期や排出時などの液量が少ないときでも混ぜられるメリットがあります。
マグネットタイプなら、タンク底部に沈殿物が滞留するような凹凸もありません。
製品例:下部撹拌ユニット
低せん断タイプや、定置洗浄(CIP)・定置滅菌(SIP)に対応できる下部撹拌機もあります。
製品例:医薬品向け下部撹拌ユニット
その他、撹拌タンクをホッパーのような形状にして、液量が少ない時にも撹拌できるようにする方法もあります。当社ではお客さまのご希望に沿えるようにオーダーメイドで対応いたします。
ホッパー形状の撹拌装置の例:角窓付混合容器 (内面フッ素樹脂コーティング)【採用事例】
圧力下で作業できる(溶剤などを使用する場合)
溶剤の使用や密閉撹拌が必要な場合は、圧力容器と圧力下で使用できる撹拌機がセットになっているものがおすすめです。
防爆対応が必要であれば、対応可能なものを選びます。溶剤を扱う場合は装置の耐薬品性にも注意が必要です。当社にご相談いただければ、内容物の性質に合わせた最適な仕様の撹拌装置をご提案させていただきます。
製品例:ベルヌーイ流撹拌加圧ユニット PCN-O-L型
すでに沈殿している/沈殿が避けられないときは?
投入する材料自体がすでに沈殿しているとき
そのまま投入すると沈殿物が残ってしまい、ロスの発生や品質のムラにつながってしまうため、予混合してからの投入が必要になります。例えば一斗缶に入った材料の場合は、一斗缶回転型の撹拌機もありますが、1缶など少量の場合には一斗缶に撹拌体を差し込むタイプがローコストでおすすめです。
製品例:リーフツリーミキサー
液と一緒に沈殿物も残さず取り出したいとき
排出口に向かって底が傾斜している片テーパー型のタンクなど、排出性に優れたタンクがおすすめです。沈殿物の排出がスムーズになり作業負担を減らすことができます。
製品例:片テーパー急傾斜型汎用容器 脚付
またタンクの内面には、すべり性を向上させるフッ素樹脂コーティングの施工がおすすめです。
加工例:【オプション加工】フッ素樹脂コーティング
沈殿物を取り出したいとき
手作業で沈殿物を取り出したいときは、タンクに反転機能があるとスムーズです。
事例:撹拌後の原料を回収しやすくする「容器反転機能」をご提案
ろ過で取り出す際はろ過容器の使用をおすすめします。