ステンレス容器はガラスやプラスチック製の容器に比べ、耐久性やサニタリー性などの面で優れていますが、直接中身が見えないという弱点があります。
容器内でなにかを保存したり反応させる、あるいは混合させたりするときに中身を確認したいということはよくあるでしょう。しかし、通常のステンレス容器は本体・蓋とも不透明で中身を確認することはできません。
そこでこの記事では、ステンレス容器の内容物の残量やようすを確認できるようにするオプション・仕様をご紹介します。
目次
1. 残量だけを見たい
内容物の残量さえわかればよいという場合には、レベル計で水位を見たり、レベルセンサーを取り付けて測定する方法があります。
1-1. レベル計
ステンレス容器の側面を加工し、PFAチューブ型のレベル計(液面計)を取り付けることができます。
PFAチューブに通る内容物から簡単に残量を確認できます。
ステンレス容器に付いたソケットにねじ込んで取り付けするタイプとなります。PFAチューブとステンレス容器を接続する継手はSUS316製です。
チューブの長さは任意に設定可能です。また、圧力容器でも使用できます(~0.4MPa)。
実際の使用イメージ
このレベル計は、容器に入れた液体の一部がチューブ内に入り水位が見えるという構造です。
このため液体の均一性が重視される撹拌工程や、洗浄のしやすさが重視される工程ではデッドスペースになり不向きな場合があります。
レベル計のオーダーメイド事例【カバー付レベル計】
レベル計のチューブ部分を保護するステンレス製のカバーを取り付けた事例です。

カバーにレーザーマーキングなどで目盛をつけるカスタマイズをおこなえば、以下のような用途でより便利になります。
- 供給タンクの内容物の補充点管理に
- ジャケット容器のジャケット槽水位管理に
ジャケット容器とは内容物の温調ができる二槽式の容器で、ジャケットに溜まった水を熱媒として内容物を温めたり冷やしたりします。十分な水位がないと温調効率が低下するため水位の管理は重要です。
Q.洗浄時にレベル計を外して洗えますか?
A. ソケットにねじ込んで接続するタイプは取り外しができません。
洗浄時にレベル計をステンレス容器から取り外して洗浄したい場合には、取り外しの出来るソケット型ジョイントを使用したヘルール接続タイプのレベル計を取り付けいたします。お問い合わせやお見積り時にご要望をお伝えいただければ、内容物に最適なレベル計をご提案いたします。
1-2. レベルセンサー
レベルセンサーを使用すると、ステンレス容器自体を加工せずに内容物の残量を確認することができます。
レベルセンサー(液面計)と呼ばれる機器を容器に設置し、液面の高さを計測します。
レベルセンサーには、フロート式液面計、静電容量式液面計、超音波式液面計などの種類があります。レベルセンサーの種類や詳細については下記の記事でご説明していますので、あわせてご覧ください。
2. 内部のようすも見たい
残量を確認するだけでなく、内容物のようすも確認したいという方には、角フランジのぞき窓や目盛り加工+内容物が見える蓋の組み合わせがおすすめです。以下でそれぞれについてご説明します。
2-1. 角フランジのぞき窓【KNM】
角フランジのぞき窓は、ステンレス容器の側面を加工して取り付ける長方形ののぞき窓(サイトグラス)です。

ガラス部から内容物の残量を一目で確認できます。また液面だけでなく液中の状態確認も可能です。ネジで取り付けているだけなので、分解や洗浄も簡単です。
MONOVATE製はフランジやカバー、ネジはSUS304製で、シリコンゴム製のパッキンが付属します。また、可視範囲を用途や内容物に応じて決めることができます。
実際の使用イメージ
※写真は明るさ190ルクス程度の室内で撮影。
角フランジのぞき窓は、レベル計同様大まかな水位がわかります。
設置部の内面は容器の外側に向かってやや出っ張るような構造です。レベル計と比較して容器内にデッドスペースを作らないので、原料混合用の容器や洗浄性が重視される容器でも安心してお使いいただけます。
蓋に光源を取り入れる部分を設けると、容器内が明るくなり視認性がUPします。投入口のように蓋の一部が開閉する仕様や、蓋に設置するタイプののぞき窓を併用するといった方法があります。
角フランジのぞき窓のオーダーメイド事例【目盛り板の取り付け】

角フランジのぞき窓は、ご要望に応じてカバー部に目盛りを付けることができます。
Q. 角フランジのぞき窓はステンレスホッパーに取り付けできますか?
A. 可能です。粉体投入用のステンレスホッパーなどに取り付け実績がございます。

オーダーメイド例
ステンレス排出シュート(フラットタイプ)【HTL-F】の偏芯ホッパー仕様に角フランジのぞき窓を取り付けました。
2-2. 目盛り加工
ステンレス容器に目盛りを付けて残量を確認できるようにします。以下では二つの加工方法をご紹介します。
目盛り加工(打刻)
ステンレス容器に目盛りを直接打刻する加工方法です。

目盛り加工のオーダーメイド例【目盛幅の変更】

10L毎の目盛りを長くする
目盛りの長さは弊社では25mmが標準ですが、目盛りの長さを長くすることも可能です。
Q. 目盛りは何か所から加工できますか?
A. 目盛りは1か所から加工することができます。ただし目盛りの間隔が狭いなど加工ができない場合もあります。
目盛り加工(内面マーキング)
ステンレス容器の内面にレーザーマーキングにて目盛りを加工する方法です。
打刻と違い、容器内面に凹凸ができないため粉などが溜まりません。また印刷目盛のように剥離して異物になることもありません。目盛りの大きさや数は内容物や用途に応じて任意に決められ、数字や文字の印字も可能です。
Q. レーザーマーキングとは何ですか?
A.レーザーマーキングとは、ステンレス容器のバリデーション管理にも使用される印字方法です。ステンレスの表面をわずかに削りマーキングするため異物にならず、洗浄しても消えることはありません。
ステンレス容器のマーキング方法とは?
2-3 内容物が見える蓋
ステンレス容器の内部を簡単に確認できるようにするために、蓋に「のぞき窓」を付けたり、蓋に透明素材を採用したりする方法があります。
のぞき窓【NMシリーズ】


ステンレス容器の蓋に設置したヘルールに取り付けるサイトグラスです。
写真のようにガラスとカバーのみのシンプルな構造のほか、蒸気や内容物の飛散で窓が曇っても視界を確保できるワイパー付き、LEDライト付き、ネットワークカメラ付きなど様々な種類があります。
ヘルール接続のため簡単に取り外しでき、分解や洗浄ができます。
実際の使用イメージ
※写真は明るさ190ルクス程度の室内で撮影。
のぞき窓を覆うようにしっかりと顔を近づければ、内部の状態をかなりクリアに確認できます(写真左)。写真では水面の位置を確認しづらいですが、実際は水面の反射や揺らぎがありもう少し判別しやすいです。
一方でのぞき窓の斜め上あたりからさっとのぞき込むような姿勢の場合、ガラスに反射して天井が映り込む場合があります(写真右)。先述の通りしっかりのぞき窓に顔を近づければ解消できますが、あまり姿勢を変えず”ぱっと見”で確認したい といったニーズがある場合、やや使いづらさを感じられるかもしれません。
そういった場合には、可視範囲を広く確保できる方法(この後ご紹介するアクリル蓋や分割蓋など)がおすすめです。
のぞき窓のオーダーメイド事例【簡易カバーや取っ手の追加など】
低コストで、破損やホコリ付着防止の効果がある簡易的なカバーを追加しています。
また、窓本体に取っ手を2か所取り付け、持ちやすくなっています。
お客様のご希望のサイズ/メーカーのヘルールに合わせて、ヘルール規格やサイズを変更しています。
透明アクリル蓋付容器
通常のステンレス製の蓋ではなく、透明素材の蓋を採用したステンレス容器です。

蓋には食品衛生法に適合した透明アクリル樹脂を使用しています。
ガラスに比べ透明度や耐衝撃性に優れ、万が一破損したとしても破片が大きく飛び散らず安全です。
のぞき窓に比べ蓋全体が可視範囲になるので、内容物のようすをよく確認できます。
分割蓋
蓋に開口部を設け、簡単に内容物を確認できるようにしたステンレス製の蓋もあります。

気軽にお問い合わせください
食品・化粧品・化学などの現場での「中を見るのに何度も蓋を開けている」「残量をひと目で確認したい」そんなお悩みに、MONOVATEでは液面計やのぞき窓と組み合わせたステンレスタンクのご提案が可能です。
工場や研究室など、ステンレスタンクを扱う現場での課題や用途、ご要望に応じた仕様をご提案いたします。
気軽にご相談ください。



