技術コラム

密閉に欠かせないパッキンの材質と特性
2023/09/05 09:00

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ステンレス容器の密閉には、内容物の漏れや異物混入を防ぐパッキン(シール材)が欠かせません。

パッキンは、容器と蓋の間や配管などの接合部に使用される部品で、密閉性を確保する重要な役割を担っています。

しかし、使用するパッキンの材質や形状が容器の内容物や使用環境に合っていないと、膨潤・変形・剥離などのトラブルを招き、密閉性の低下や製品の品質リスクにつながる恐れがあります。

本コラムでは、ステンレス製の密閉容器に使用される6種類の代表的なパッキン材質の種類とその特徴について詳しく解説します。医薬品・食品・化学業界などでステンレス容器を使用している方は、ぜひパッキン選定の参考にご覧ください。

ご注意

この記事は一般的な参考データであり、使用条件や環境により変わることがあります。

当社ではお客さまの使用環境や内容物、コスト面などから最適なパッキン材質をご提案いたします。気軽にお問い合わせください。

代表的な6種類のパッキン材質

ここでは、MONOVATEのステンレス製密閉容器で採用されている以下6種類のパッキンについて、それぞれの特長と欠点をご説明します。

シリコーンゴム(Q)|Silicone rubber(当社名:シリコン)

シリコーンゴム製の例

シリコーンゴム(Silicone rubber)とは、耐候性・耐薬品性・非粘着性・耐オゾン性などの特性を持ち、難燃性・撥水性・電気絶縁性などに優れたゴムです。工業用途だけでなく家庭用品にもよく使われています。

MONOVATE製ステンレス密閉容器用パッキンの標準材質です。シリコンパッキンを見る

使用温度範囲:-70℃~+200℃

シリコーンゴムの特長

  • 耐候性
    酸素、オゾン、紫外線に対する安定性に優れ、長時間紫外線や風雨にさらされても特性はほとんど変化しません。
  • 耐薬品性
    アルコールや希酸、希アルカリなどにはほとんど侵されません。
  • 撥水性
    他のゴムより濡れにくく、防水シール材としても使われています。
  • 難燃性
    炎を近づけても簡単には燃焼せず、着火した場合も煙や有毒ガスの発生がほとんどありません。
  • 非粘着性・非腐食性
    離型性に優れており、離型剤としても使われています。また、化学的に不活性で他の物質を腐食させません。
  • 透明性・着色性
    シリコーン本来の透明性に優れ、着色できます。着色した場合もシーリング材としての基本的な性能は変わりません。
    カラーパッキン製品を見る

シリコーンゴムの欠点

  • 強酸に弱い
  • 非粘着性により一般の有機系接着剤ではほとんど接着できない
  • 引っ張り強度・引き裂き強度・耐摩耗性などの外的な力学的要素に弱い
  • 気体透過性が大きく、気体を通しやすい(ただし水と水蒸気は分子の密度が異なるため、防水性が悪いわけではない)
  • 熱や紫外線で黄変することがある

フッ素ゴム(FKM)|Fluorocarbon rubber

工場やプラントのイメージ画像

フッ素ゴム(Fluorocarbon rubber)とは、ゴム材料中で最高の耐熱性を持ち、優れた耐油性・耐燃料性・耐薬品性を持つ合成ゴムです。自動車部品や化学プラントなど幅広い分野で使用されています。

現在市販されているフッ素ゴムの場合、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)のものを指すことが一般的です。
フッ素ゴム製品を見る

フッ素ゴムの特長

  • 耐熱性
    使用温度範囲:-10℃~+230℃
    シリコーンゴムに比べ長時間シール性能が維持できるため、高温部分のシールに使われます。
  • 耐油性
    一部のリン酸エステル系の作動油を除き、鉱油のほとんどに高温まで耐えます。

フッ素ゴムの欠点

  • 耐寒性に劣る
  • 他のゴムに比べて非常に価格が高い
  • 有機酸、ケトン、エステル、アミン系の薬品には耐性がない

クロロプレンゴム(CR)|Polychloroprene rubber

ウェットスーツのイメージ画像

クロロプレンゴム(Polychloroprene rubber)とは、古くから使用されている合成ゴムです。

機械的強度、耐候性に優れ、それ以外の特性に対しても平均的でバランスが良いため幅広く使われています。難燃性、接着力(ゴムのりにした時)が強い、ガス透過率が低いなどの特長もあります。ウェットスーツなどにも使用されています。
クロロプレンゴム製品を見る

使用温度範囲:-35℃~+110℃

クロロプレンゴムの欠点

  • 耐熱性に劣る
  • 低温時に結晶化しやすく、低温時の使用には向いていない

なぜタイヤは黒い?

タイヤやウェットスーツ、パッキンなど、黒色のゴム製品を良く見かけます。特にタイヤは黒のイメージが強いですね。これはゴムの強度や耐摩耗性を向上させるためにカーボンブラックという、黒色の炭素の微粒子を配合しているというのが主な理由です。

ただし現在では、カーボンブラックの代わりにホワイトカーボンと呼ばれる白色のシリカを補強剤として使っているものも多くなり、黒色以外のゴム製品も増えています。

黒いタイヤのイメージ画像

ニトリルゴム(NBR)|Nitrile butadiene rubber

ゴム手袋のイメージ画像

ニトリルゴム(Nitrile butadiene rubber)とは、耐油性、耐摩耗・耐老化に優れた合成ゴムです。

特に耐油性に優れており、圧縮永久ひずみ、引張り強さ、耐磨耗性にも優れる特長があります。シール材や手袋の材料、自動車部品など様々な分野で使用されています。
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使用温度範囲:-10℃~+120℃

ニトリルゴムの欠点

  • 耐熱性に劣る
  • ケトンやエステルなどの極性溶剤には使用できない
  • 耐候性(耐オゾン性など)に劣る

エチレンプロピレンゴム(EPDM)|Ethylene propylen diene rubber

競技場のトラックのイメージ画像

エチレンプロピレンゴム(Ethylene propylen diene rubber)とは、耐薬品性、耐寒性、耐オゾン性、耐老化性にすぐれた合成ゴムです。また、比重が市販ゴムの中で最も小さいなどの特長も持っています。

オゾンに強く老化しにくいことから、自動車部品や競技場のトラックなどにも使用されています。
エチレンプロピレンゴム製品を見る

使用温度範囲:-40℃~+140℃

エチレンプロピレンゴムの欠点

  • 耐油性に劣り、一般的な鉱油には耐性がない

四フッ化エチレン樹脂(PTFE)|Polytetrafluoroethylene plastics

テフロン加工のフライパンのイメージ画像

四フッ化エチレン樹脂(Polytetrafluoroethylene plastics)とは、フッ素樹脂とも呼ばれ、耐薬品性、耐オゾン性、耐候性に優れた樹脂です。これまでご紹介した材質とは異なりゴムではなく、樹脂(プラスチック)です。

最も摩擦が少ないほか絶縁性も高く、電気絶縁材としても優れた材料です。非粘着性・低摩擦性(すべりやすい)により、摺動材としても使用されます。フライパンのコーティングなどでも有名です。このように優れた特性から、さまざまな分野で使用されています。
PTFE製品を見る パッキンはすべてPTFEでよいのでは?

フッ素樹脂の特長

  • 耐薬品性
    どんな酸やアルカリ、有機薬品に対しても安定しており、吸湿・吸水・膨潤もなくほとんど侵されることがありません。
  • 耐熱性
    使用温度範囲:-100℃~+260℃
    広い温度範囲にわたって長時間の使用に耐えることができます。

フッ素樹脂の欠点

  • 価格が高い
  • 一品毎に削り出しのため量産ができない
  • 樹脂の為、パッキンとしてのシールが弱く密閉性に劣る
  • 磨耗しやすい
  • 非粘着性により、接着剤による接着ができない

パッキンに関するよくある質問

ゴムパッキンや樹脂パッキンに関する、よくある質問を3つご紹介します。

ゴムパッキンがブヨブヨになった!

ゴムパッキンと液体の相性によっては、パッキンが液体を吸収して膨張し、ブヨブヨになることがあります。

このことを膨潤と呼びます。これは液体がパッキンのゴムの分子間に入り込んでしまうことで生じます。

その他にも、使用環境や液体との相性によってはパッキンに亀裂など劣化が生じる場合もありますので、最適なパッキンを選定する必要があります。パッキンの膨潤について詳しくはこちら

パッキンはいつ交換すればいいの?

MONOVATE製密閉容器のパッキンは、消耗品のため適時交換が必要です。交換時期は、使用頻度や内容物などによって異なります。

具体的な交換時期や劣化のサインが分からず判断に迷う方に向けて、「いつ取り換える?ステンレス容器用パッキンの交換目安とは」にてパッキン交換の目安をご紹介しています。ぜひご覧ください。

パッキンはすべてPTFEでよいのでは?

PTFE(四フッ化エチレン樹脂)は他のゴムよりも優れた要素が多く、パッキンはすべてPTFEにすればよいのでは?と思うかもしれません。

しかし樹脂であるために密閉性に劣るという弱点があり、耐薬品性よりも密閉性が重要視される用途には適していません。また、その他のパッキン材質に比べて値段が高く、採用しにくい点も挙げられます。

耐薬品性と密閉性を持つパッキン材質は?

パッキンに耐薬品性と密閉性の両方を求める場合には、パーフロ(FFKM/Perfluoroelastomer)などの材質をご提案します。

パーフロはパーフルオロエラストマーとも呼ばれ、フッ素ゴムの一種です。ゴム製パッキンの中で最も耐薬品性・耐熱性に優れています。

性能も良く需要も限定的となることから非常に高価なゴムですが、耐薬品性と密閉性が求められる場合などに採用されます。

気軽にお問い合わせください

この記事でご紹介した内容は一般的な参考データであり、使用条件や環境により変わることがあります。

MONOVATEでは、お客さまの使用環境・内容物・コスト面などから最適なパッキン材質をご提案いたします。気軽にお問い合わせください。パッキン特性一覧表もご用意しています。

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