つるつる、ざらざら、すべすべ…素材や表面仕上げによって、ステンレスは様々な表情を見せます。
しかし実際の表面がどのようになっているのかは、目視ではわかりません。
そこで今回は、走査電子顕微鏡(SEM)を使って撮影したステンレス表面の写真(SEM画像)をご紹介します。
走査電子顕微鏡(SEM)とは?
光を利用した光学顕微鏡(虫めがねや一般的な顕微鏡等)とは異なり、電子線を利用した顕微鏡です。
光学顕微鏡では見ることのできない、細かな表面構造まではっきりと見ることができます。
1.素材のままのステンレスの表面
BA材
弊社のステンレスタンクで主に使用している、ステンレス鋼板の表面仕上げです。
鏡面のように光沢を持っており、写り込みがあります。
見た目はつるつるで艶がありますが、SEM画像では縦に細かな傷があります。
しかし深い傷や目立つ凹凸もなく、拡大してみてもつるつるな状態だということがわかります。
2B材
一般的に使用されているステンレスの表面仕上げです。
すべすべした銀白色の表面で、写り込みはありません。
見た目は艶消しでマットな質感ですが、SEM画像では表面にウロコのような凹凸があるのがわかります。
2.表面処理を施したステンレスの表面
バフ研磨
バフ研磨は、綿やフェルトで作られた「バフ」を、ステンレスの表面に回転させながら当てる研磨方法です。
表面にとても細かい傷を付けて光沢を出しています。
弊社で一般的な320番のバフ研磨をBA材と2B材に施したSEM画像を見てみます。
SEM画像を比較すると、どちらも一定方向に長い傷が付いていることがわかります。
特にBA材では、バフ研磨をすることで、素材そのものの表面よりも傷が増えてしまいます。
また、黒い斑点は溝に残った研磨剤です。
このように、バフ研磨は見た目はキレイになっても、表面には傷や汚れが付いています。
弊社では製品にBA材を使用し必要な部分のみ研磨を行うことで、表面をキレイに保てるようにしています。
バフ研磨について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
電解研磨
電解研磨は、電解液中で金属表面から金属イオンを溶出させ、表面を平滑化させる研磨方法です。
非常にきれいな鏡面に仕上がります。
SEM画像を比較すると、どちらも凹凸がなく滑らかな表面になっていることがわかります。
2B材では、ウロコのような凹凸が無くなっています。
電解研磨について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
バフ研磨+電解研磨
320番のバフ研磨後に電解研磨を施したもののSEM画像です。
SEM画像を比較すると、バフ研磨によると思われる傷が薄く残っていますが、バフ研磨のみの表面に比べて表面がとても滑らかになり、黒い斑点(研磨剤の残留)もかなり少なくなっています。
PFAコーティング(50μm)
ステンレスの表面にフッ素樹脂をコーティングした表面処理です。
非粘着性により液のすべり性が向上し、表面は汚れても簡単にふき取りができます。
SEM画像
SEM画像を見てみると、なだらかな凹凸があり傷が多く見られます。
PFAの硬度は鉛筆の「H」程度と言われていますので、ステンレスに比べ表面が柔らかく傷が付きやすいことがわかります。
フッ素コーティングについて詳しくはこちらのページをご覧ください。
gemini処理®
gemini処理®はステンレスの表面を直接加工した表面処理です。
粉の付着を抑止し、すべり性が向上します。
SEM画像
SEM画像を見てみると、細かな凹凸が見られます。
これはこの表面処理方法がブラスト処理の一種であるためです。
gemini処理®を施した製品についてはこちらのページをご覧ください。
番外編:シリコンパッキン
弊社のクリップ式密閉容器の付属品「A型シリコンパッキン【PQA】」も見てみました。
SEM画像
少し波が見られますが、滑らかな表面になっていることがわかります。
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撮影機種:走査電子顕微鏡 倍率:1000倍
撮影場所:埼玉県産業技術総合センター 撮影素材サイズ:15mm×15mm
転用防止のため画像にロゴマークを追加しています。
gemini処理®は株式会社不二製作所の商標です。
表面は一般的な洗浄をしたあとに撮影しています。