最近、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム液の需要が高まっています。お客さまの会社でも、
- 社内の衛生環境保全のために、消毒液を購入した
- 社員の健康確保のために消毒液を用意し、分配している
といった対応をとられているのではないでしょうか。
一斗缶やバッグインボックスなど大容量のものを購入し、それを小分けにする。また、消毒液の種類によっては希釈する必要がある場合もあるかと思いますが、このようなときにおすすめなのが「小分けに適したステンレス製品」です。
このコラムでは、「そもそも消毒液とステンレスの相性ってどうなの?」ということに加えて、消毒液を小分けにするのに最適な2つのステンレス製品をご紹介します。
---消毒液とステンレスの相性
---消毒液とパッキンの相性
2. 消毒液を保管・小分けするのに最適な2つのステンレス製品
---保管から小分けまでできる「レベル計・バルブ付密閉容器」
1. 消毒液をステンレス容器に保管しても大丈夫?
まず、消毒液とステンレス容器との相性を確認しておきましょう。このときに着目したいのは、①本体(ステンレス)と消毒液の相性と②パッキンと消毒液の相性のふたつです。
以下では、一般的によく使われるアルコールと次亜塩素酸ナトリウム液の相性についてご説明します。
消毒液とステンレスの相性
- アルコール (エタノール):○
- 次亜塩素酸ナトリウム液:△
アルコールはステンレスに影響を及ぼしません。そのため、アルコールをステンレス容器の中に保管するのはもちろんのこと、ステンレス容器自体をアルコールで消毒することもできます。
対して、次亜塩素酸ナトリウム液を扱う場合には、その濃度に注意が必要です。
北里環境科学センターほかの研究1 によれば、濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム液にSUS304を浸漬させたところ翌日には一部に錆びが発生。そのため、市販されている濃度5%程度の次亜塩素酸ナトリウム液(ハイター等)をそのまま入れるのには適していません。
一方、山形大学の研究2 では、濃度0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液に72時間SUS304を浸漬したところ、特に影響がなかったという結果が出ています。なお、物を拭くなどの消毒用途では濃度0.05%で使用するのが一般的です。
そのため、次亜塩素酸ナトリウム液の保管という観点からすれば、ステンレス容器はあまり適していないといえます。ただし、液の移動などに便利なステンレス製ビーカーやひしゃくで扱う分には問題ないでしょう。その際には洗浄を怠らないようにするのが肝心です。
ご注意
○次亜塩素酸ナトリウムは希釈後になるべく早く使い切る必要があります。時間の経過とともに有効塩素濃度が低下するためです。長期的な保管、作り置きなどはしないようにしましょう。
○濃度60%以上のアルコールは消防法上危険物(第四類・アルコール類)に分類されます。80L以上を貯蔵する場合には届出が必要になりますので、注意が必要です。詳しくは所轄消防署などにご確認ください。
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消毒液とパッキンの相性
当社の容器に使われているパッキンの標準材質はシリコンです。シリコンと消毒液との相性を確認しましょう。
- アルコール (エタノール):○
- 次亜塩素酸ナトリウム液:○
どちらの消毒液とも、シリコンに対して影響を与えません。また、これ以外の材質ではPTFE(フッ素樹脂)も問題なく使用できます。
ご注意
パッキン材質やステンレスと使用する消毒液の相性は、必ずお客さまご自身でもご確認ください。濃度や使用条件により、劣化や腐食が生じる可能性もあります。
特に次亜塩素酸ナトリウム液は強力な酸化作用を有しており、その濃度により影響の程度も変わります。
2. 消毒液を保管・小分けするのに最適な2つのステンレス製品
ステンレス製品でアルコールを扱うのは問題がないこと、次亜塩素酸ナトリウム液については濃度や接液時間によって使用できることをご紹介しました。
第2章では、消毒液を保管・小分けするうえで便利な当社ステンレス製品を2つご紹介します。
保管から小分けまでできる「レベル計・バルブ付密閉容器」
エタノールなどのアルコールを保管し、さらに小分けするのに便利なのが【CTHV-LV/-LV-FL】レベル計・バルブ付密閉容器です。
クリップ式の密閉容器である【CTH】にバルブを取り付けました。バルブももちろんステンレス製、シール部はPTFEのため、腐食・膨潤・溶解などの心配はありません。
さらにレベル計を取り付けることで、蓋を開けることなく残量確認できるようにしています。レベル計のチューブ部分はPFAで、アルコールなどに侵されません。
無水エタノールを希釈して使う必要がある場合でも、この容器で希釈から保管、小分けまで可能です。
消毒液をスムーズに排出するために
CTHVなどの密閉容器は、蓋を開けないと排出が困難です。しかし、都度蓋を開けないといけないのは不便ですし、衛生的にも気になりますよね。
そこで、蓋にエアー抜き用の小さな穴をあけたり、そこにバルブを取り付けたりすることで、蓋を開けなくてもスムーズに排出できるようにすることも可能です。
「排出しやすい密閉容器」の特注事例
化学メーカー様に納入した、アルコール供給用の容器です。排出性を向上させるためにエアー抜き穴を加工していますが、ここにバルブを取り付け、異物混入リスクを低減することもできます。
お急ぎのお客さまへ
「すぐに製品が必要!」というお客さまには、レベル計の付いていない【CTHV】ボールバルブ付密閉容器がおすすめです。
レベル計付きの密閉容器では納品までに15日程度いただいておりますが、レベル計が付いていないモデルであれば、最短2~3日で納品できます。お客さまの必要性に応じてご選択ください。
なお、密閉容器から液体を排出するときには都度蓋を開ける必要があります。あらかじめご了承ください。
口の小さな容器にも注ぎやすい「サニタリー性の高いビーカー」
消毒液を口の小さな容器へ小分けするのに便利なのが、【BK-SMA-DP】液だれ防止ビーカーです。
動画で製品をチェック
このビーカーはその名の通り、口からの液だれを防止するビーカーです。上の動画では、エタノールを移し替える様子をご覧いただけます。
エタノールの表面張力は水よりも小さく、比較的液だれしやすいのですが、このビーカーでは液をしっかり切って注ぎます。
SUS316Lを採用しているので、耐食性にも優れているのが特長です。
【特注事例】ボトルからさらに小分けできる「バルブ付ボトル」
バルブのシール部やキャップのパッキンにはPTFEを採用しており、耐薬品性に優れています。ボトル内で希釈し、そのまま使用する場合などにおいて便利にお使いいただけます。
このバルブ付ボトルは特注品です。MONOVATEでは、当社の既存のラインナップ製品に追加工を施すのはもちろんのこと、完全オーダーメイドのステンレス製品の製作も承っています。材質を変え、優れた耐食性を誇るハステロイCでの製作も可能です。
なお、特注製品の場合、お客さまのお手元に届くまでにお時間を頂戴します。数日中に入手されたい場合には、先ほどご紹介したCTHV(バルブ付タンク)やBK-SMA-DP(液だれ防止ビーカー)などがおすすめです。
3.まとめ-アルコールなら問題なく使えます
このコラムでは消毒液とステンレス容器との相性、そして消毒液を扱うのに適した2つの製品をご紹介しました。
ご説明しましたとおり、次亜塩素酸ナトリウムの場合にはその濃度や接液する時間によって、どの程度ステンレスに影響が出るかが変わります。そのため、ステンレス製品で扱う場合には検討が必要です。
一方、アルコールであればステンレス、シリコンパッキンのどちらにも影響を与えることはありません。ご安心してお使いいただけることでしょう。
社員のみなさまの健康確保、社内の衛生環境維持にぜひ当社のステンレス製品をお役立てください。
お問い合わせ
製品のご希望はもちろんのこと、「こんな消毒液を扱いたいけど大丈夫なの?」などと思われることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。お客さまのご希望に沿える形状・加工・素材をご提案します。
参考文献
1) 岡上 晃・小澤 智子ほか(2015),複合型塩素系除菌・洗浄剤の各種環境表面素材に対する影響に関する検討,日本環境感染学会誌,30(5),pp.325-330
2) 白石 正・仲川 義人(1999),各種消毒剤の金属腐食性と殺菌効果に及ぼす腐食の影響,環境感染,14(4),pp.275-279