ステンレス製品の最後の仕上げに行われることの多い「バフ研磨」。一般的に、ステンレスの表面がぴかぴかになっているのはバフ研磨をおこなっているからです。
バフ研磨を行うと、加工時についたバリや傷を除去したり、表面の平滑度を向上できます。とても綺麗な見た目に仕上がるため、バフ研磨を行うことが一般的です。
しかし、綺麗なのはあくまでも「見た目」。基本的にはバフ研磨をしないほうが、綺麗な状態を保てるのです。この記事ではその理由と、MONOVATEのこだわり・考え方についてご説明します。
バフ研磨とは?作業の種類を紹介
バフ研磨は、ステンレスの表面を美しく仕上げるために使用される代表的な研磨方法です。
綿やフェルトで作られた円盤状の「バフ」を高速回転させ、ステンレスの表面に当てて磨くことで、バリや傷、汚れを除去し、滑らかで光沢のある表面に仕上げます。
この工程は、特に見た目の美しさを追求する際に欠かせない最終仕上げとして使用されることが多いです。
また、研磨の細やかさは「番手」という数字で表され、数字が大きいほど細かく仕上がり、800番のバフ研磨では鏡のような光沢が得られます。
バフ研磨の種類を紹介
バフ研磨では、布やウール、麻、スポンジなどで作られた「バフ」に、適切な「研磨剤」を付け、回転させながら研磨を行います。
バフには様々な種類があり、用途や素材によって使い分けが必要です。
たとえば、布製のバフは一般的な研磨に広く使用され、ウールやスポンジ製のバフは特定の仕上げに適しています。
また、研磨剤も固体や液体といった形状があり、研磨の段階や対象物の材質に応じて選ばれます。
粗めの研磨剤で表面の大きな傷を削り取り、その後、細かい研磨剤を使用して滑らかに仕上げることで、美しい光沢を引き出すことができます。
バフ研磨のメリットとは?
バフ研磨には、仕上がりの美しさや柔軟な対応力といった多くのメリットがあります。
まず、バフ研磨はステンレスや金属の表面を滑らかにし、鏡面のような光沢を生み出すことが可能です。
これにより、見た目が美しくなるだけでなく、製品の耐久性も向上します。
さらに、バフや研磨剤の種類を選ぶことで、様々な材質や仕上げの要求に柔軟に対応できる点も大きな利点です。
例えば、細かい部分まで丁寧に仕上げたい場合や、大きな面を一気に磨き上げたい場合など、用途に応じた仕上げが可能です。
バフ研磨にはデメリットも
その一方で、バフ研磨にはデメリットもあります。
バフ研磨は表面をピカピカにしますが、実際には必ずしも綺麗にできているわけではありません。
バフ研磨をする際には、バフに「研磨剤」と呼ばれる磨き粉のようなものを塗布します。
すると、この研磨剤の油がステンレス表面の目に見えない細かな傷に入り込んでしまうのです。
もちろん、研磨後に洗浄を行いますが、この油を完全に除去することは難しいのが現実です。
一般的にはこうした残留物が何かに影響を与えることはありませんが、製薬工程等の特にサニタリー性が求められる現場では好まれません。
バフ研磨したステンレス表面を見てみると
では、バフ研磨したステンレスとそうでないものとでは、その表面にどれだけの差があるのでしょうか。
目視で確認することはできないので、走査電子顕微鏡(SEM)を使って撮影したステンレス表面の写真(SEM画像)を見てみましょう。
上掲の画像は、一般的に使用されることの多い「2B材」のステンレス表面を写したものです。
バフ研磨をすると、もともとあったウロコのような凹凸はなくなりますが一定方向に長い傷がつきます。
画像上に見える黒い斑点は研磨剤等の汚れで、研磨により生じた表面に残存してしまうことがわかります。
一方で、この画像だと「研磨剤は多少残るかもしれないけど、バフ研磨をすることで圧倒的に綺麗になっているんじゃないの?」とお感じになる方もいらっしゃるかと思います。
しかし、これはあくまで一般的に使用されることの多い「2B材」を写したもの。当社で主に使用している「BA材」で比較してみると、どうでしょうか。
ご覧のとおり、研磨後のほうが傷が増えてしまっていることがわかります。
研磨前では深い傷や目立つ凹凸がなかったのに対し、研磨後は明らかに傷が増えてしまっています。
また、そこに研磨剤等の汚れ(黒い点)が残存していることもおわかりいただけるでしょう。
MONOVATEのバフ研磨
MONOVATEでは、特別注文したBA材を中心に使用し製品を生産しています。
BA材は光輝焼鈍(Bright
annealing)という無酸化雰囲気にて熱処理したもので、表面に酸化スケールが生じず、非常に細かい表面粗度を持ちます。
2B材よりもグレードの高い材料で、鏡のような光沢が特徴的です。
先ほどの画像でご覧いただいたとおり、当社で使用しているBA材はそのままの状態が一番綺麗です。
バフ研磨をすると表面に傷がつき、そしてそこに研磨剤等が残存してしまいます。
そうした研磨剤は、ルージュなどの原因になることもあります。
そこで当社では、極力バフ研磨をしないことをこだわりとしています。
バフ研磨はあくまでも加工跡を除去する目的で、限られた範囲にのみ施します。
下の画像のとおり、バフ研磨を施すのは容器全体のうち約6.5%に過ぎません(通常の容器の平均)。
素材の段階から研磨の必要がない高品質なものを厳選し、極力傷をつけずに加工する。
そして、求められる品質を満たすために必要な最低限の研磨を施し、オンリーワンの品質で提供する。
これが当社の矜持です。
わずかな残存物をも除去する「電解研磨」
バフ研磨を極力減らし、傷や残存物を少なくしていますが、さらに汚れを除去したいという場合には「電解研磨」でより綺麗にできます。
滑らかな表面となることで、汚れなどの物質が沈着しづらく洗浄を容易する電解研磨の効果とその方法については「最高グレードの電解研磨」をご覧ください。