実験・デモレポート

渦に粉が溜まって巨大なダマが…CMCと多糖類の溶解時間短縮テスト

2026/08/28 00:00

「粉はゆっくり入れているのに、渦の真ん中に粉がたまって、巨大なダマになってしまう」

医療用途向けの原料を20Lで調製したい、というお客様からのご相談でした。増粘性のある多糖類とCMCを混ぜた系で、溶け残りが出てしまうという課題です。

見えてきたのは2つ。撹拌体の段数と向きで溶け方が変わること。そして、この原料ではバッフルが不利に働く可能性があることです。

渦の中心に粉がたまってできた巨大なダマ
渦の中心に粉がたまってできた巨大なダマ

目次

  1. お客様の課題―渦の中心に粉がたまる
  2. 今回のテスト条件
  3. 渦ができにくい撹拌機を選んだ理由―ベルヌーイ流撹拌機とは
  4. 撹拌テスト―1段で2時間、そこから撹拌体を追加
  5. バッフルは常に正解か―今回見えたもう一つの課題
  6. まとめ

1. お客様の課題―渦の中心に粉がたまる

お客様は現在、一般的な撹拌機で多糖類とCMC(カルボキシメチルセルロース)の水溶液を調製されています。粉の投入はゆっくり時間をかけて行っているものの、それでも溶け残りが発生していました。

特に問題だったのが、渦の中心部に粉がたまってしまうという現象です。撹拌によってできた渦の中心に投入した粉が集まり、そのまま巨大なダマになってしまいます。いったん大きな塊になってしまうと、撹拌を続けても簡単には解けません。

投入前の原料である多糖類とCMCの粉体
投入前の原料(多糖類とCMC)

なぜ増粘系の粉はダマになりやすいのか

CMCや多糖類のような増粘剤は、水に触れた瞬間から溶け始めます。このとき、粉の粒子の表面だけが先に溶けてゲル状の膜になることがあります。膜ができると内部への水の浸透が妨げられ、外は溶けているのに中は粉のまま、という状態になります。

さらに渦の中心は、液の流れが下向きに集中し、投入した粉が一箇所に集まりやすい場所です。粉が密集した状態で水と接すれば、粒子どうしが互いにくっついて塊になりやすくなります。

「ゆっくり投入しているのに溶けない」という現象は、投入速度ではなく、粉が集まる場所と、そこでの流れの弱さが原因になっているケースがあります。

溶け残って巨大なダマになった粉
溶け残って大きな塊になった粉

2. 今回のテスト条件

今回のテスト条件は以下の通りです。

項目 内容
容量 20L
原料 増粘性のある多糖類 + CMC
仕上がり粘度 3,000 mPa·s前後(目安)
撹拌機 ベルヌーイ流撹拌機
撹拌体 ベルヌーイ流撹拌体 BEAG®(1段/2段・上下向き)
回転数 800rpm
撹拌時間 1段で2時間 → 撹拌体を追加して2段でさらに2時間(同一バッチで継続)
合格ライン 洗浄4時間+溶解4時間で1バッチ(次工程の反応に8時間かかるため、溶解速度は優先しない)
今回のテストに使用した20Lタンクとベルヌーイ流撹拌機の全景
今回のテストに使用した装置の全景

3. 渦ができにくい撹拌機を選んだ理由―ベルヌーイ流撹拌機とは

今回のテストで使用したのは、ベルヌーイ流撹拌機です。

ベルヌーイ流撹拌機は、羽根で液を掻き混ぜるのではなく、撹拌体の上下から吸い込んだ液を水平方向へ吐き出す構造の撹拌機です。搭載しているのが、ベルヌーイ流撹拌体「BEAG®」です。

一般的なプロペラ羽根は、液を押して混ぜることで縦型洗濯機のような液の流れを作り、撹拌します。この時、液面の中央が引き込まれて、すり鉢状の渦(ボルテックス)ができます。今回のお客様が困っていた現象も、この渦が起点になっていると考えられます。

一方ベルヌーイ流撹拌体は、羽根の下側から吸い上げて横方向へ吐き出す動きで撹拌します。液を回転方向へ押し出す力が弱いぶん、液面に大きな渦ができにくいのが特徴です。渦ができにくければ、粉が一箇所に集まる場所もできにくい。というわけです。

ベルヌーイ流撹拌機(NTME-A)の外観

ベルヌーイ流撹拌機

強力な吸い上げ流を生む「ベルヌーイ流撹拌体 BEAG®」を搭載した、トップエントリー型の撹拌機です。撹拌体の上下から吸い込んだ液を水平方向へ吐き出すため、液面に大きな渦ができにくい構造です。

ベルヌーイ流撹拌機の詳細はこちら

この撹拌体には、もうひとつ特徴があります。取り付ける向きで、液の流れる方向が変わることです。通常の向き(正位置)なら撹拌体の下側から強い上昇流が生まれ、反転させれば下降流をつくれます。この性質が、次に述べる2段構成の検証につながります。

撹拌体1つ(正位置)がつくる、底からの吸い上げの液流

資料「ベルヌーイ流撹拌機ってなに?」の表紙
  • PDF資料
  • 全16ページ
  • 無料

羽根の形が変わると、液流はここまで変わる

吸い上げ流がどう生まれるのか、プロペラとの違いは、資料「ベルヌーイ流撹拌機ってなに?」で解説しています。

資料をダウンロードする

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4. 撹拌テスト―1段で2時間、そこから撹拌体を追加

今回は1つのバッチを混ぜ続けながら、途中で撹拌体を追加しています。原料を仕込み直した2回のテストではありません。まず1段で2時間撹拌し、溶けきらなかったため、そのままの液に撹拌体をもう1段足して、さらに2時間撹拌しました。回転数は800rpmのまま変えていません。

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まず撹拌体1段(正位置)で2時間
検証1で使用した撹拌体1段(正位置)の構成

まず試した撹拌体1段(正位置)の構成

結果は、あらかたは溶けたものの、大きな塊が残るというものでした。液全体としては粘度が上がり、溶解は進んでいます。ただ、目視で確認できるサイズの塊がいくつか残り、この状態では次工程に送れません。

1段で2時間撹拌した時点で残っていた大きな塊

1段で2時間撹拌した時点で残っていた大きな塊

2
同じ液のまま撹拌体を追加し、2段(上下向き)でさらに2時間

ここで実験を止めず、液を入れ替えずに撹拌体をもう1段追加しました。追加した撹拌体は向きを反転させ、上下向きの2段構成としています。回転数は800rpmのまま、さらに2時間撹拌を続けました。

検証2で使用した撹拌体2段(上下向き)の構成

途中で撹拌体を追加した2段(上下向き)の構成

結果は、完全溶解には至らないものの、残った塊が時間の経過で溶けていくレベルまで改善しました。2時間の時点で残っていた「撹拌を続けても解けない硬い塊」とは、明らかに状態が違います。放置しておけば溶ける状態であれば、実際の運用では十分に使えます。

検証2・2時間撹拌後の液の状態 検証2・2時間撹拌後の液の状態

2段に変更してさらに2時間(通算4時間)撹拌した後の液の状態

段数と向きを変えると、何が変わったのか

1段と2段では、生まれる液の流れが違います。

観点 撹拌体1段(正位置) 撹拌体2段(上下向き)
生まれる流れ 底からの吸い上げ流 上昇流と下降流
得意なこと 沈んだ粉を巻き上げる 液面の粉を引き込み、底の粉も巻き上げる
弱いところ 液面に浮いた粉を引き込めない

増粘性のある粉は、水に触れた表面がゲル化して浮きやすくなります。1段では液面に留まった粉が、そのまま塊として残りました。2段にすると液が縦方向に入れ替わり、粉が一箇所に留まる時間が短くなります。塊の状態が変わったのは、この循環が効いたためだと見ています。

テストを終えて―お客様からのコメント

最初から2段で混ぜていれば溶けそうですね。この状態なら、実際の運用でも十分に使えそうです。

うちは医療用途の製品をあまり手がけてこなかったので、いつもバリデーションなどの対応に苦労しています。MONOVATEさんは対応実績が多数あるとのことで、安心しました。

― テストを実施したお客様

医療・医薬用途の設備では、GMP・バリデーション対応といった設備選定以外の作業が必須です。この領域は弊社に実績があるため、撹拌の検証と並行して仕様を詰められます。

コラム|医薬品製造に安心を MONOVATEのGMP・バリデーション対応事例をご紹介
先発医薬品メーカー様にも「MONOVATEのバリデーション対応は安心」との声を頂戴しています

5. バッフルは常に正解か―今回見えたもう一つの課題

今回の検証で、撹拌体の構成とは別に気づいたことがあります。バッフル(邪魔板)が、この原料では不利に働いている可能性です。

バッフルは、撹拌槽の内壁に取り付ける板です。液が槽と一緒にぐるぐる回ってしまう旋回流を抑え、渦の発生を減らして撹拌効率を上げる目的で使われます。撹拌の基本的な部品であり、渦の中心に粉がたまるという今回の課題に対しては、むしろ有効に見える装備です。

ところが実際の挙動を見ると、次のような事象が確認できました。

  • 粉やダマがバッフルに付着し、そこに留まってしまう
  • バッフルと容器の縁の間にダマが挟まり、動かなくなる
バッフルに付着し、留まってしまった粉とダマ バッフルに付着し、留まってしまった粉とダマ

バッフルに付着し、留まってしまった粉とダマ

増粘系の原料は、それ自体が粘り、付着しやすい性質を持ちます。液中に固定された板があれば、そこが付着の起点になります。いったん付着したダマは液の流れから外れるため、撹拌を続けても溶けません。

バッフルは旋回流を抑えるという役目を果たしています。ただ、それと同時に付着物の滞留場所もつくっていた、と考えられます。

撹拌中のバッフル周辺の挙動

付着性・増粘性のある粉末原料では、バッフルが不利に働くことがあります。撹拌のセオリーとして当然のように付けている部品でも、原料によっては見直す余地がありそうです。

6. まとめ

今回のテストを通じて、以下の点が確認できました。

  • 増粘系の粉の溶け残りは、粉が集まる場所と流れの弱さに起因することがある
  • 撹拌体を上下向きの2段にして縦方向の循環をつくることで、塊が「時間で溶ける状態」へ変わった
  • 付着性のある原料では、バッフルが付着物の滞留場所になる可能性がある

MONOVATEでは、今回のように条件を変えながら、適切な仕様を判断できるようお客様の設備選定をサポートいたします。

※今回の結果は特定の条件下でのものです。原料のロット・粒度・水分・液温、投入速度、槽形状などの条件により挙動は変化します。実際の運用にあたっては、お客様の原料・条件での実機テストをおすすめします。

「本当に溶けるのか」は、
実際に混ぜてみないと分かりません

増粘剤・多糖類・CMCの溶け残り、ダマの発生、付着の問題は、装置の仕様表だけでは判断しづらいポイントです。今回のように撹拌体の段数や向き、バッフルの有無を切り分けながら、仕様を決められる状態まで一緒に詰めていきます。

  • お客様の実際の原料・濃度で、溶解の状態を確認できる
  • 撹拌体の構成や槽の仕様を変えて、条件を切り分けて検証できる
  • 医療・医薬用途で求められる仕様についても相談できる
テストセンターでの撹拌テストの様子

まずは現在の原料・濃度・バッチ量・課題をお聞かせください。
「うちの原料は難しいと思う」という方こそ、一度ご相談ください。

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