OEM生産している化粧品を、自社でも作れるようにしたい。
よりよい商品開発のために、自社で試せる環境を作りたい。
そんなご要望を持つ化粧品メーカー様と、内製化の実現可能性を検証する撹拌テストを実施しました。
テストの内容は、複数種類のオイルに粉体原料を分散させ、総量150Lのスラリーを製造する撹拌です。液体と粉体がほぼ同量と、粉体の非常に多い条件で、粉だまりなく均質に分散できるかがポイントになります。
結果は、120分の撹拌で溶け残りは目視で合格範囲まで分散。以下、使用した撹拌機の構成と撹拌の経過、そして現場で見えた3つの注意点をまとめます。
目次
今回の撹拌テストのポイント
今回の原料は、液体と粉体がほぼ同量という、粉体の非常に多い配合です。これだけ多い粉体を均一に分散させられるかがポイントになります。
粉体が多いと、投入直後には液面に浮いて溜まる粉と、濡れて底に沈む粉が同時に大量に発生します。この浮く粉・沈む粉の両方を動かしきらないと、どこかに粉だまりが発生します。片方だけを強力に動かす撹拌では足りない、というのがこの配合の難しさです。
今回の撹拌テスト条件
実機では500L規模での生産を想定されていますが、テストでは都合により150Lに容量を落として検証しました。
スケールアップを見据え、撹拌機の回転数も実機想定から落とした250rpmで設定し、この条件でトルク負荷に余力があるかも確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 容量 | 150L |
| 対象原料 | 化粧品原料スラリー(複数種類のオイル+粉体原料) |
| 粉体比率 | 約50% |
| 完成品粘度 | 約1,000cP |
| 撹拌機 | ベルヌーイ流撹拌機(750W・H型撹拌体φ140mm 2段) |
| 回転数 | 250rpm |
| 撹拌時間 | 120分 |
結果―120分で溶け残りは目視合格範囲まで
結論から言うと、120分の撹拌で、目視で合格範囲と判断いただける状態まで混ざりました。
また、今回は実機へのスケールアップを見据えて回転数を250rpmに抑えた条件でしたが、運転中のトルクを確認しながら進めた結果、トルク負荷には余力があり、120分を通して安定して運転できました。
※分散状態の詳細な評価はお客様にて解析中です。本記事の結果は、テスト現場での目視確認にもとづくものです。
大量の粉体の分散を実現した撹拌機
今回使用したのは、この配合に合わせて構成したベルヌーイ流撹拌機(750W・H型撹拌体φ140mm 2段)です。
ベルヌーイ流撹拌機は、羽根で液を掻き回すのではなく、撹拌体の上下から吸い込んだ液を水平方向へ吐き出す構造の撹拌機です。
この撹拌体を通常の向きで1つ取り付けると、撹拌体の下側から強い上昇流が生まれます。底に沈んだ粉を巻き上げるのは、この流れです。動画で、底から液が持ち上げられていく様子を確認できます。
撹拌体1つ(正位置)がつくる、底からの巻き上げの液流
一方で、液面に浮いた粉を液中へ引き込む下降流は、この向きだけでは強く発生しません。
ポイントは「撹拌体を上下2段」に組んだこと
そこで今回は、撹拌体を上下に2つ、上段を逆位置で取り付けました。下段が底からの上昇流をつくり、上段が液面の粉を巻き込む下降流をつくります。単体では強く出ない下降流を、逆位置の撹拌体で足した構成です。
2つの撹拌体が強力な2方向の流れをつくる
上下2段構成が生み出す2つの流れ
- タンク底からの強力な持ち上げ(下段):沈みやすい粉体を、タンクの底から強力に巻き上げます。
- 液面からの引き込み(上段・逆位置):投入直後に液面へ溜まる粉体を、液中へ引き込む液流を発生させます。
先に述べたとおり、この配合の難しさは「浮く粉と沈む粉が同時に大量発生し、その両方を動かす必要がある」ことにありました。
今回の上下2段構成は、まさにこの「底からの巻き上げ」と「液面からの引き込み」という2方向の流れを同時につくることで、その難しさに応えています。
今回の構成は、ベルヌーイ流撹拌機をベースに、この配合に合わせて撹拌体の段数・向き・回転数を専用に構成したものです。原料や容量によって最適な構成は変わりますので、類似の条件をご検討の場合はご相談ください。
溶け残りの変化を追う
合計120分の撹拌を、30分ごとにサンプリングして確認しました。ここでは、変化の分かる4点を掲載します。
液面の変化
スライダーを動かすと、時間の経過にともなう液面の変化を確認できます。
スライダー、または時間ラベルをタップして切り替え
排液後の状態
スラリーを排出したあと、タンクの底に一部粉だまりがありましたが、今回はお客様より許容範囲とのご判断をいただきました。この底部の粉だまりも、粉体の多い配合で起こりうる現象のひとつです。
排液後に確認された底部の粉だまり
粉体比率の高いスラリーで、撹拌設備の選定前に知っておきたい3つのこと
今回のテストでは、容量や粘度といった完成品のスペックだけでは読み切れない現象がいくつも起きました。
いずれも、粉体比率の高いスラリーを製造するときに繰り返し起こりうることです。撹拌機を選ぶうえで参考になるリアルなポイントを3つにまとめます。
1粉体は撹拌軸や壁面に付着する。撹拌の流れだけでは取り切れないことも。
今回のテストでは、粉体を投入した直後に、撹拌軸とタンク壁面へ粉体が付着する様子が見られました。投入時に一時的に嵩が増え、液面付近の軸や壁面に粉が乗ります。
その後、撹拌が進んで粉体が液中へ取り込まれると液面が下がり、付着した粉が液面より上に取り残されます。こうなると撹拌の流れがその部分まで届かず残ることが確認できました。
壁面の付着
シャフトの付着
対処の方向
今回は、この付着を現場作業者の方がヘラでかき取る運用を前提に、お客様に許容範囲とご判断いただきました。
付着そのものを減らす方向としては、粉体を投入する位置やタイミングを調整する、少量ずつ投入する・液中に粉体を投入する方法を考えるといった作業手順の工夫が考えられます。あわせて、投入口の位置やタンク形状といった設備側の設計でも、付着の起きやすさは変わります。
2一度に投入すると、撹拌機への負荷が急に上がる
粉体比率が高い場合、全量を一度に投入すると、撹拌機にかかる負荷が急上昇する可能性があります。完成品の粘度に対して撹拌機の性能に余裕がないと、分散の途中で粉が局所的に固まったときに想定以上の負荷がかかり、撹拌機が停止することもあります。
対処の方向
今回のような条件では、少量ずつ投入しながら撹拌を進めるのが現実的です。投入のペースを分けることで、負荷の急上昇を避けながら分散を進められます。
逆に投入方法を変えられない場合は、完成品の粘度ではなく分散途中のピーク負荷を基準に撹拌機を選定し、出力に余力を持たせて吸収する方向もあります。
3「混ざるか」だけでなく「投入できるか」も設備の一部
少量ずつの投入は分散には有効ですが、人力で行うと作業者への負担が大きくなります。
粉体は重く、投入時には粉塵も舞います。撹拌機だけを決めても、投入が回らなければ現場の運用は成立しません。
対処の方向
撹拌機の選定と同時に、投入方法や作業環境まで検討しておくと、実際の運用に耐える設備設計につながります。「何で混ぜるか」と「どうやって入れるか」は、セットで考えておく領域です。
弊社では、粉体の搬送・投入や、人手で行っている作業の機械化についてもテスト・ご相談を承っています。
スペックや図面では分からない課題を、
実機テストで事前に確認しませんか?
粉だまり・付着・投入時の負荷・作業性など、設備仕様だけでは判断しづらいポイントを実物で確認できます。 テスト結果をもとに、導入後のトラブルやミスマッチを防ぐための改善案までご提案します。
- 実際の原料を使って、撹拌・分散状態を確認できる
- 粉体投入時の負荷や付着など、現場で起きる課題を事前に把握できる
- テスト結果をもとに、設備仕様や運用方法を相談できる
