ホッパーの側面をゴムハンマーで叩く。棒を突っ込んで掻き出す。粉体の充填現場では、そうやって粉を落としている工程が珍しくありません。乾式ファンデーション(パウダーファンデーション)の充填も、その一つです。
ただ、叩けば騒音とホッパーの変形を招きます。撹拌棒で掻き出せば、粉は壁面へ圧着していきます。どちらのやり方も「出す」ために別のかたちで代償を払っている、という状態です。
掻き出しも打撃もなしで、粉は自分の重さだけで落ちてくれるのか。MONOVATEのテストセンターで、容量80Lのホッパーに乾式ファンデーションを50L入れ、エアレーションのあり・なしで確かめました。
目次
- ファンデーションがホッパーで止まる理由:油分で固まり、ブリッジができる
- 叩く・掻き出すの代償:騒音、ホッパーの変形、壁面への付着
- エアレーションホッパーとは:出口に後付けして、空気で流動化させる
- 今回のテスト条件:乾式ファンデーション50Lを80Lホッパーに
- 結果:エアレーションのON/OFFで排出はどう変わったか
- なぜ自重では落ちず、空気を入れると落ちたのか
- まとめ:撹拌棒に頼らない排出という選択肢
1. ファンデーションがホッパーで止まる理由:油分で固まり、ブリッジができる
乾式ファンデーション(一般にパウダーファンデーションと呼ばれるタイプ)は、充填機の手前でホッパーに溜めておき、そこから一定量ずつ落として容器に詰めていきます。
ところがこの粉、放っておくと素直には落ちてくれません。
理由は、粉そのものの性質にあります。ファンデーションは顔料に油分を含ませてつくられているため、粒子同士が油分で軽くくっついた状態になっています。手のなかで握ると、そのまま塊として固まります。サラサラの砂とは、まるで挙動が違う粉です。
だからホッパーに入れても、自重では流れません。現場は、物理的に粉を動かす方法をとることになります。
2. 叩く・掻き出すの代償:騒音、ホッパーの変形、壁面への付着
よく使われるのは二つです。ホッパーの中に撹拌棒(アジテータ)を入れて機械的に崩しながら押し出すか、側面をハンマーで叩いて振動で崩すか。どちらも粉は出ます。ただし、それぞれ別のデメリットがあります。
撹拌棒は、粉を壁面に押し付けます。羽根が通るたびに粉が壁へ圧着したような付着として残ります。付着が厚くなると出口付近の流れはさらに悪くなり、より強く叩かないと出てこない状態へ向かいます。品種を切り替えるたびに、こびりついた粉を落とす作業も発生します。
ホッパーを叩くと、設備と人に負荷がかかります。打撃音は工場内でそれなりの騒音になります。同じ場所を叩き続ければホッパーは変形し、溶接で取り付けた部品が取れる原因にも。そもそも人が張り付いて叩くことになり、その分作業効率は悪くなります。
「叩く」「掻き出す」以外のやり方はないか―今回の検証は、そこが出発点でした。
3. エアレーションホッパーとは:出口に後付けして、空気で流動化させる
今回試したのは、粉を機械で崩すのではなく、空気で流動化させて落とすという考え方です。
エアレーションホッパー
ホッパーの出口に取り付けるアクセサリです。内側の多孔質面から少量の空気を吹き出し、粉体に空気を含ませて流動化させます。ラットホール(中心だけが抜けて周囲が残る現象)やブリッジといった詰まりを解消し、排出を促します。
撹拌棒と違い、壁面へ粉を押し付ける力は働きません。
ただし、空気を入れれば何でも流れるわけではないので、実際に対象の粉で試す必要があります。
4. 今回のテスト条件:乾式ファンデーション50Lを80Lホッパーに
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象粉体 | 乾式ファンデーション |
| 投入量 | 50L |
| ホッパー | 集塵フード付ホッパー 脚付【HTD-L-565】(同心型・容量80L) |
| 排出補助 | エアレーションホッパー |
5. 結果:エアレーションのON/OFFで排出はどう変わったか
結果、エアレーションホッパーを使うことでファンデーションの排出状況は大幅に改善しました。
エアレーションなし
シャッター弁を開けても出てこない
エアレーションあり
バルブを開けるとすぐに排出
まず、エアレーションを効かせない状態でシャッター弁を開けました。
ほぼ粉は落ちずに排出が止まりました。ホッパーの中を覗くと、粉が出口の上でアーチ状に留まっているブリッジ状態のようです。
ホッパー内部。粉が自分で橋を架け、出口の上で止まっている
自重だけでは落ちない、ということが確認できました。
エアレーションを作動させると粉はすぐに流れ出しました。装置を叩いたり、棒で突いたりといった補助は一切していません。
排出中(左)と排出完了後(右)。ホッパー内部には薄い付着だけが残った
1回出て終わりでは、実際の充填ラインでは使えません。充填機は、一定量ずつ出しては止める動作を繰り返すからです。
そこで運転に近い形にするため、シャッター弁の開閉を手動で繰り返しました。
結果は、いずれの回も問題なく排出できました。一度止めた後の再スタートでブリッジが再発する、といったことは起きていません。
なお、こうした断続的な運転をさらに進めて、夜間の無人運転が成立するかを抹茶で検証した記事もあります(抹茶の夜間無人搬送を検証!~粉詰まり対策編~ )。
空気を入れると、なぜ止まっていた粉が落ちるのか
ブリッジ・ラットホールが解消される仕組みと、抹茶・小麦粉・キサンタンガムでの検証例を資料にまとめています。細孔構造による洗浄性・コンタミ対策にも触れています。
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6. なぜ自重では落ちず、空気を入れると落ちたのか
1章で見たとおり、乾式ファンデーションは粒子が細かく、油分によって粒子同士がくっつきやすい粉体です。ホッパーの中では粒子が互いに支え合い、出口の上に自立したアーチを作ります。このアーチは、上に載っている粉の重さくらいでは崩れません。だから自重では落ちない、という状態になります。
エアレーションが効いたのは、粉同士の「くっつき」をほどいたからだと考えられます。
粒子のあいだに空気が入り、粒子同士が支え合う力が弱まります。粉全体が液体に近い挙動になり、アーチが崩れ、排出されます。
撹拌棒がアーチを「壊す」のに対して、エアレーションはアーチが「できにくい状態にする」。同じ排出でも、粉への働きかけ方が違います。
壁面への圧着が起きにくいと期待できるのは、この違いによるものです。
7. まとめ:撹拌棒に頼らない排出という選択肢
今回の検証で確認できたのは、次の点です。
- 乾式ファンデーションは、80Lホッパーからの自重排出ではブリッジを起こして止まる
- エアレーションホッパーを作動させると、止まった状態からでもすぐに排出が始まる
- シャッター弁の開閉を繰り返す断続的な運転でも、排出は問題なく継続した
撹拌棒で掻き出している充填ホッパーに対して、可動部を持たない排出補助という選択肢があることは示せたと思います。壁面への付着に悩まれている現場では、検討する価値のある方向だと考えています。
※今回の結果は特定の条件下でのものです。粉体の粒度・水分・かさ密度・保管状態などによって流動性は大きく変わり、同じ装置構成でも挙動は変化します。また今回は付着量の定量比較までは行っていません。実際の運用にあたっては、お客様の原料・条件での実機テストをおすすめします。
今回使用した装置
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エアレーションでは改善しきれなかった条件についても記載しています。
「その粉が落ちるかどうか」は、
実際に入れてみないと分かりません
ブリッジ、ラットホール、壁面への付着。粉体の排出まわりの困りごとは、カタログの数値だけでは判断がつきません。 今回のように、お客様の粉をそのままホッパーに入れて、エアレーションのあり・なしで何が変わるかを確認できます。
- お客様の実際の粉体で、自重排出できるかどうかを確認できる
- ホッパー・バルブ・排出補助を自社で扱っているため、組み合わせを変えて検証できる
- テスト結果をもとに、既存設備への組み込み方を相談できる
まずは現在の粉体・ホッパー形状・排出量・課題をお聞かせください。
テストは弊社八潮工場(埼玉県八潮市)で実施し、所要時間は半日~1日程度が目安です。
