湿り気や油分を含む粉体は、ホッパーや搬送設備にとって扱いが難しい素材のひとつです。
バルブを開けても粉を供給できない、容器の中で塊が残る─そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
今回は、こうした粉体を対象に「エアを送り込む」という方法で排出性がどのように変化するかを検証しました。
目次
粉体詰まり対策とエアレーションの考え方
粉体がホッパーから出てこない、あるいは排出中にブリッジが発生して止まってしまう――
こうした「粉詰まり」は、多くの現場で共通の課題です。
一般的な対策としては、ホッパーを叩いて振動を与えるノッカーや、
装置全体を揺らすバイブレータなどの方法がよく使われます。
これらは固着した粉体を一時的に動かすのに有効ですが、粉体の種類や性状によっては十分な効果が得られない場合もあります。
そこで用いられるのが、粉体に空気を送り込み流動化を促すエアレーションという考え方です。
粒子の間に空気を通すことで摩擦を減らし、粉が軽く動き出すようにする方法です。
エアレーションホッパーとは?
エアレーションホッパーは、このエアレーションの仕組みを応用した装置です。
粉体にエアを与えることで流動化を促し、ブリッジやラットホールといった粉詰まりを緩和します。
乾いた粉体では非常に効果的な手段ですが、湿り気や油分を含む粉体ではうまくいかないこともあります。
今回は、このエアレーションホッパーを用いて、油分を多く含む粉体(ココア・全粉乳)でどのような排出の違いが生じるかを検証しました。
※本検証は社内で実施した簡易的なデモです。条件や結果は粉の性質や環境によって異なります。
乾いた粉体と油分を含む粉体の違い
粉体は、見た目が似ていても性状によって動き方が大きく変わります。
乾いた粉体は粒子が細かく分散し、手で触るとサラサラと崩れやすいのが特徴です。
一方、湿り気や油分を含む粉体は、粒子表面に油膜や水分があるためやや光沢があり、部分的に塊が残ることがあります。
こうした性質の違いが、ホッパーからの排出・供給や搬送の安定に大きく影響します。

湿り気・油分を含む粉体の例(化粧品原料)
今回の検証対象粉体:ココアと全粉乳
検証に用いたのは、ココアと全粉乳です。
どちらも油脂分や吸湿性を持つためしっとりとした性状になりやすく、乾いた粉体に比べてブリッジが発生しやすい傾向があります。
ココアパウダー
全粉乳
油分を含む粉体の排出実験
ココアの排出実験
エアレーションホッパーを作動させない状態では、バルブを開けても粉体が固まったままで、ほとんど排出されませんでした。
内部でブリッジが形成され、粉が出口を塞いでしまう状態です。
エアレーションホッパーを作動させると、数秒のうちに粉体が崩れ始め、連続的な排出が見られました。
エア有無による排出挙動の差は明確で、排出速度・量ともに顕著な改善が確認されました。

エアレーションホッパーなし:ブリッジ状態で排出停止

エアレーションホッパーあり:スムーズに排出
全粉乳の排出実験
エアレーションホッパーを作動させない場合、全粉乳はバルブを開けても粉体が動かない状態が続きました。
エアレーションホッパーを作動させると、ホッパー壁面の一部に空気が通り抜ける様子(チャネリング)が見られました。
バルブを開けてからおよそ7秒ほどはほとんど排出されませんでしたが、時間の経過とともに粉体内部が崩れ、徐々に排出が進む様子が確認されました。
エアを加えることで静止していた粉体に動きが生じ、最終的に排出が見られる段階まで改善しました。
ホッパー壁面に空気が通り抜ける様子
考察:油分を含む粉体へのエアレーションホッパーの効果について
今回の実験では、一般的にエアレーションが効きにくいとされる湿り気・油分を含む粉体でも、排出挙動が明確に改善されるケースが確認できました。
特にココアではエア導入直後から粉体が崩れ、短時間で排出が完了。全粉乳でも時間をかけることで流動化が進み、最終的に排出が確認されました。
これらの結果から、湿った粉体でも条件が適すればエアレーションによって流動化が促進される可能性が示されています。
一方で、湿り気や油分を多く含む粉体は粒子間の付着力が強く、空気が抜けてしまう(チャネリング)ことで効果が得られにくいこともあります。
つまり、「湿った粉にも使える装置」ではなく、「条件が合えば効果を発揮することもある装置」として捉えるのが正確です。
実際の粉体では粒径や含油量、保管環境によって挙動が変化するため、エアレーションによる流動化・排出性改善効果を見極めるには実粉体での検証が欠かせません。
MONOVATEでは、テストセンターにてお客様の原料を用いたデモ検証を行っています。
「自社の粉ではどうなるか」――ぜひMONOVATEのテストセンターで実際にお確かめください。
テストセンターでお持ちの粉を使い、実際に排出挙動を確認してみましょう。
